夫婦の会話が減ってきたら
熟年離婚への第1歩

五百田:たしかに、女性が長年不満を抱えたまま生活していることに気づいていない男性は多いですね。あるとき奥さんから離婚を切り出されて「突然そんなこと言われても……」と、途方にくれるという。

原口:熟年離婚を切り出すのは、圧倒的に女性が多いんです。男性にとっては寝耳に水なんでしょうけれど。

五百田:男は言ってくれないとわからない。だから、「何も言われていないんだから不満なんかないだろう」と油断している節があります。

原口未緒(はらぐち・みお)弁護士。1975年東京都生まれ。夫婦・離婚案件を主に扱い、相談件数は350を超える。13年より業務にコーチング・カウンセリング・セラピーなどの手法を取り入れ、「心もケアする弁護士」として奮闘中。自身も離婚経験がある。初の著書『こじらせない離婚』が話題を集めている。

原口:私の離婚相談でも、関係を修復したいと思っている人に限っては、「男性には『ここまで言わないとダメなの?』と思うことまで、いちいち、ちゃんと伝えてください」と言ってます。

五百田:そう。いちいち口に出して言う必要があるんですよね。女性と違って「察することができない」のが男性なんです。女性同士だと、子どもの頃からお互いの感情を察しあって生きていますが、男性にはその「センサー」がない。だから女性が「こんなこと言わなくてもわかるだろう」と思うことでも、いちいち説明してほしいと思ってしまう。

原口:奥さんが、ご主人に対して自分が考えていることを伝えるようになったとたん関係が良くなったケースでは、「こんな単純なことだったんですね」と言う女性が多いですね。そこに気づければ、夫婦関係が修復することもあります。

五百田:男性としてみれば、妻にきちんと説明を求める一方で、あるとき突然「生理的に無理になった」と離婚を切り出されないために、ちゃんとコミュニケーションをとらなくてはいけないということですね……。とくに女性は、かつて愛した人であっても、一度シャッターが降りてしまったら二度と開かない、というところがあるので、そうなったら対処のしようがない。

原口:そのとおり。奥さんが家で話をしなくなったら、危険信号です。

五百田:男性は会話がなくなってきたことを「気を使わなくていい。むしろ心地よい関係になってきた」と感じてしまう

原口:逆ですね。家に帰ったときに奥さんが「ねえねえ、聞いて!」「となりの奥さんがさ〜」と、他愛もない話をしているうちは大丈夫。でも、話をしなくなったら、夫に無関心になった証拠です。

五百田:男性は、そのサインに気をつけなきゃいけない。

原口:スタンプカードがたまらないうちに。

五百田:シャッターが降りきってしまう前にも(笑)。