論理的に話そうとすると
モラハラ扱いされる時代

__夫婦ができるだけコミュニケーションをとることが家庭円満の条件だということはわかりました。その一方で、男性が家庭でロジカルな発言をしようとすると、それが女性の反感を買うことがありませんか?

原口:論理的に話をされることに慣れていない女性は、理詰めで話をされると、追い詰められた気持ちになりやすいんです。最近、離婚のきっかけで多いのがご主人からの「モラル・ハラスメント」ですが、ご主人のロジカルな話し方に圧迫感を受けて、モラハラだと感じるケースが増えてますね。

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五百田:それって、昔は「うちの夫は屁理屈ばっかり言って」くらいで済ませていたのかもしれないですよね。でも、今は「モラハラ」と言われてしまう。

原口:そう。本人たちにその自覚はなくても、周囲から「それってモラハラじゃない?」と言われたり、本やネットの記事を見て「うちもモラハラかも」と思うケースが多いように感じます。

五百田:『こじらせない離婚』にもそういったシーンがありましたよね。

原口:傾向として、一度「うちの亭主ってモラハラ?」と思ってしまうと、「あれもひどい。これもひどかった」と記憶が芋づる式につながりやすいんです。

五百田:なるほど。過去の記憶が一瞬で感情に結びついて、終わったことに対して怒ることができるのも女性の特徴ですね。それも、男性からすると理解しがたいことのひとつです。

妻の自己肯定感を否定すると
モラハラになりやすい

__家庭内のモラハラとは、具体的にはどんな状況があるんでしょうか?

原口:一番典型的なのが「誰のおかげで食えていると思ってるんだ?」という言葉ですね。

五百田:なるほど。それって、考えてみればとてもロジカルな嫌がらせの言葉ですね。「俺が食わせてやってるんだぞ!」と胸を張るならまだしも、疑問形で問い詰めるあたりが理屈っぽい。もっとライトなところでは、「何時に仕事が終わるかわからない。夕飯はムダになるから作らなくていい」というような言い方をする人もいます。男からしてみると、ムダはよくない、という極めてシンプルでロジカルな思考の結果なんだけれど、女性からすると……。

原口:「ひどい!」のひとことです(笑)。「私がやっていることがムダですって?」となってしまう。

五百田:男性は「帰れないかもしれないから料理がムダじゃない?」という意味で言っているのに、女性は「私の存在がムダなの?」と感じてしまうわけですね。

原口:実はモラハラやDVは、気が強くて自分は悪くないと思っている人からの相談はほとんどなくて、自己肯定感が低い人ほど悩むことが多いんです。「ムダじゃない?」と言われて「私のやっていることはムダなんだ……」と落ち込んだり、「自分が悪いのかもしれない」と思ってしまう人は、モラハラや精神的DVを受けやすい傾向にあります。

五百田:そういう女性に対しては、どうアドバイスされるんですか?

原口:まず、好きなことをしてもらいます。何でもいいんです。趣味をスタートしたり、働きに出たり。そういう方は「夫が〜」「子どもが〜」と、言葉の主語が「他人軸」になっていることが多いので、まずは「自分軸」を取り戻してもらうようにしてます。家庭の中から一歩外に出るだけで、世界が変わって見えるはずですから。

五百田:男性側も、女性の自己肯定感を否定している自覚がないと、モラハラになってしまうわけですよね。

原口:そう。全然自覚がないのに、モラハラ認定される可能性があるんです。

円満な夫婦関係は
究極のリスク管理である

五百田:これだけ男性と女性の考え方が違うと、家庭内の話し合いでも「事実」と「感情」をしっかり分けないと、むしろコミュニケーションを増やすことがトラブルの元になってしまいますね。

原口:「誰が食わせてやってると思ってるんだ!」と言っても、法律的に夫が稼いできたお金は夫婦の共同財産です。離婚したときは、そのお金は二人のものになる。

五百田:熟年離婚したとしたら、退職金もきっちり半分持っていかれますよね。

原口:はい。持っていかれます。年金も半分ですよお子さんがいれば、親権も持っていかれるかもしれない。

五百田:「奥さんの会話をずっと楽しく聞いてあげなさい」とか、「一生妻だけを愛し続けなさい」と言っても男性にはピンとこないかもしれないけれど、「それをしないと将来財産を半分持っていかれて一人になりますよ」というのは、もの凄くリアリティがあるはずです。

原口:たしかに、そのほうが論理的思考に慣れている男性には伝わりやすいかもしれませんね。

五百田:家に帰ってソファにドカッと座ってくつろごう、なんて100年早いと(笑)。将来、奥さんに捨てられて財産は半分、親権も養育費も持っていかれることを考えたら、いつも心のどこかにリスク管理の意識をもって、奥さんとの関係をメンテナンスし続けないといけないんですね。

 (第2回に続く)