時給5万円も取るような高いスキルを持つホンモノのプロが、あなたの会社の仕事を無料で手伝いたいと言ってきたらどうするだろうか? そんなうまい話があるはずがないと警戒するだろうか?

 詐欺でも企んでいるか、さもなくば不況のせいで仕事が無くなって営業を仕掛けてきているのか、いずれにせよろくでもない話に違いないと思うかもしれない。しかも、件のプロは本気であなたの会社のために役立ちたいと思っていて、それで自分のスキルと時間を提供したいと言ってきている。あなたは、ますますあり得ない話だと思うだろう。

 しかし、現実にそのような人たちが増えている。「プロボノ」活動をやる人たちである。

来年2010年は、
日本のプロボノ元年に!?

 「プロボノ」というのは、弁護士や公認会計士などの有資格者、各種コンサルタントやデザイナーなどの専門家、一流企業のビジネスパーソンなど、さまざまな分野のプロフェッショナルがボランティアとして社会貢献活動を行なうこと。プロフェッショナルのボランティアならプロボラじゃないのか? と思うかもしれないがそうではない。プロボノは何かの略語ではなく、「公共のために」を意味するラテン語なのだそうだ。

 弁護士が無料法律相談を行なったり、ウェブデザイナーがNPOのウェブサイトを無料で作ったり、コンサルタントがNGOの事業戦略やブランド戦略を無料で構築する。このような活動がプロボノである。

 プロボノが従来のボランティアと異なるのは、普段の仕事でやっていることとまったく同じ内容の仕事を、同じレベルで行なっていることだ。

 例えば、普段はマーケティング戦略の提案を仕事にしている広告代理店のプランナーが、休日にはNGOが企業に提案するためのコーズ・マーケティングの企画書を書いたりする。あるいは、会社では欧米企業との契約業務などを担当しているビジネスパーソンが、夜にはNGOのために、その高い英語能力を活かした翻訳作業や英文メールでの交渉業務を行なっていたりする。

 給料をもらってやっていることと、無給で提供しているサービスが、内容も質もまったく同じなのだ。

 そして、高いレベルのプロフェッショナルほど、積極的にプロボノ活動を行なう傾向が見られる。つまり、熱心なプロボノ活動家は、仕事の値段が高いだけでなく、仕事にも勉強にも多忙で時間が無い。高い価値を持つ知的サービスを、少ない時間をやりくりして無償で提供しようとする。まったく合理的ではない。それなのに、優秀なプロであるはずの彼ら、彼女たちをプロボノ活動に駆り立てるものは何なのか? 今回はそのことを考えてみたい。

 ところで、2010年は(日本における)プロボノ元年なのだそうだ。それを提唱するのはNPO法人の「サービスグラント」。プロボノに特化した中間支援団体だ。スキル登録者は現在、約300名。この1年で倍増したという。

 サービスグラントでは現在、次の3つのサービスをNPOに対して提供している。ウェブサイトの構築。カタログやパンフレットなどの印刷物の制作。営業資料の作成と営業シミュレーションによる営業戦略サポート。プロジェクト毎に5~6人のチームを編成し、サービスを提供する。

 特徴的なのは、戦略性を重視する視点で、たとえばウェブサイトの構築も、単なるウェブのデザインやウェブ制作ではない。対象となるNPOに関して、周辺調査や競合調査まで行った上で分析し、コミュニケーション・コンセプトをきちんと固めた上でウェブサイトを構築する。