毎年、韓国では社会状況を反映したユニークな流行語が生まれる。2015年には、地獄のような韓国社会という意味の「Hell朝鮮」、また生まれついた貧富の差を「金の匙、木の匙、土の匙」など匙のクラスで揶揄する「スプーン階級論」という言葉が大流行した。
そんな韓国では今年、“ある言葉”が流行の兆しをみせている。日本でも何かと話題になることが多い「ミニマリズム」という言葉だ。
韓国では、ミニマリズムという言葉は「ある目的を達成するにあたり、必要以上のものをもたない生き方」や、「最小限のもので幸福を感じる人々やその思想」を指す言葉として理解されている。モノに縛られず、精神的満足と幸福を追求するという意味では、日本のそれと近しい解釈になる。そもそも、韓国でミニマリズムという言葉が流行するきっかけを作ったのは、日本の著名人たちだとも言われている。
代表的な例は、「片付けコンサルタント」の近藤麻理恵氏や「ミニマリスト」の佐々木典士氏。彼らの著作は韓国語に翻訳・出版されており、多くの韓国人に愛されている。
韓国では現在、ミニマリズムという言葉が実に多くのシーンで使われている。というよりも少し使われすぎている感が否めない。例えば、シンプルなファッションセンスや、スッピンを披露する女性芸能人に対しては「ミニマリズムの魅力!」と称賛してみたり、軍隊生活(兵役生活)については「ミニマルライフの極み!」、芸術作品に対しては「ミニマリズム的傑作!」などと、猫も杓子もミニマリズムといった様相だ。流行語があれば使わずにはいられない、韓国人の国民性といったところだろうか。
一方で、よりストイックにミニマリストを目指す若者たちがいる。過度な競争社会のしがらみを捨て、精神的な豊かさを求めようという人たち。すなわち、ミニマリズム原理主義者というべき若者たちだ。ミニマリストを目指す男性のひとり、オ・ソンチョルさん(27歳)は言う。
「常に競争しなければならなかったり、不必要なものをたくさん持たなければならないという強迫観念に駆られる人生にすごく疲れていました。そんな時、日本のミニマリズムやミニマリストの本に出会った。そういう生き方もあるのだなと、目からウロコが落ちました」