参議院議員選挙は、参議院自体の存在意義が問われているほか、選挙制度自体にも問題点が多い。「選挙に行っても意味がない」という指摘は案外正しい。それでも筆者は選挙に行くことを勧めたい。今回の参院選の争点と具体的な「投票のヒント」を解説する(政治ジャーナリスト 松井雅博)

今回から18歳以上に投票権
有権者増えても下がる投票率

そもそも参議院は必要なのだろうか。選挙制度にも問題点は多く、「選挙に行っても意味がない」という声は案外正しい指摘のようだ

 6月22日(水)、ついに参議院議員選挙が公示された。

 今回の参院選から18歳、19歳の若者も投票権を得ることになる。単純に考えれば、有権者数は約240万人増えることになる。

 その一方で、投票率はかつて民主党が政権を奪った時の選挙を頂点に下がり続けている。筆者が多くの方と対話して感じるのは「選挙に行く人より行かない人の方が多い」という勘違いが流布しているという点だ。

「投票率を上げよう」というキャンペーンがよく行われているせいかもしれないが、実際の国政選挙においては、常に投票率は50%を越えているので、選挙に行く人の方が多数派と言える。とはいえ、現状のままでは今回の参院選で過半数の有権者が選挙に行かない状況に陥ってしまいそうだ。

◆民主党政権誕生時以降の国政選挙における投票率の推移

 選挙に行かない理由で最も大きい声は「面倒くさい」というシンプルなものかもしれない。この方々は、そもそも投票行為に意味を感じていないのだろう。確かに、消費増税や安全保障も大切な論点であることはわかっちゃいるが、結局「誰に投票すれば自分の考えを政治に反映させられるか、わからない」という根本的な疑問は十分共感できるし、その通りである。

「選挙に行く」ことを盲目的に善とし「選挙に行かない人は政治に文句を言うな」と強弁する人も時折見かける。しかし、テロや暴動を起こすわけでもなく決まったことに従っているなら、投票を放棄するのもまた一つの「有権者に認められた選択肢」だと筆者は考えている。当然、選挙に行かずとも政治に文句を言ってもいいと思う。

 ここで読者に注目していただきたいのは、ここ数年で「投票率が大幅に下がり続けている」という事実だ。元々選挙に行っていたはずの人々が投票に行かなくなっている。無関心なのではなく、もともとあった関心が失われたのだ。こうした方々の心の声は「せっかく投票したけど、何も変わらなかった」という体験に基づく諦めの声かもしれない。これは深い問題だ。

 2009年の選挙の時はわかりやすかった。「自民党や官僚を“悪役”に仕立てて政権交代を目指す」というストーリーは素人に伝わりやすかったからだ。

 しかし単純化しすぎたためか、民主党政権のパッとしない顛末もわかりやすく伝わってしまい、それが多くの有権者の心を投票から遠ざけてしまった。