日本では海爾(ハイアール)などの中国家電メーカーが有名ですので、中国でもさぞかし家電市場は活況だと思う方も多いかもしれません。

 しかし、中国の都市部では、既に家電市場は飽和状態となっています。したがって、中国家電メーカーは慢性的に生産能力過剰問題を抱えている状態なのです。

 一方、中国農村部の家電普及状況は都市部の1980年代の水準に相当しています。農村部のカラーテレビの平均保有量は都市部の約3分の2、洗濯機と携帯は半分にも及ばず、冷蔵庫に至っては約4分の1しかない状況です。

 そこで、ここをテコ入れすれば生産能力の過剰問題が解決できるということで、2008年12月から本格的に始まったのが「家電下郷」です。実は同政策は金融危機前の2007年12月から河南、四川の3省及び青島市で試験的に実施されていました。「家電下郷」は政府の補助金付与政策で、家電製品を農村部に普及させる政策です。最初、同計画の対象となった製品はカラーテレビ、冷蔵庫、洗濯機及び携帯電話で、農村部での購入に対して政府が13%の補助金を付与するというものでした。そしてその後、対象製品の拡大が行われています。

 一方、都市部での買い換え促進を狙った政策も発表されました。これは2009年5月19日に日本の内閣に当たる中国国務院が決定したもので、北京、上海、広東などの9省市で、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンの5品種を対象として試験的に実施する予定で、対象製品を買い替える際に、価格の10%を補助するというものです。

 ちなみにこの政策は2010年5月に終了予定でしたが、景気下支えのため、2010年末まで期限を延長し、重慶市、遼寧省など19の省・直轄市にも拡大しました。

実は世界最大の家電生産国
今年は世界の需要改善で輸出も回復

 中国は世界最大の家電生産国であり、家電輸出国でもあります。世界景気後退の影響で、2009年通期の中国家電輸出は前年比12.3%減の365.1億米ドルとなりましたが、2009年後半からの回復基調は鮮明になってきています。