ただ上場できるくらいにまで会社を大きくする場合、その過程においてはどうしても、ベンチャーキャピタルの資金に頼ったり、重要取引先に株主になってもらったりする必要があり、徐々にオーナーの持ち株比率は減っていく。ネットベンチャーの上場時の創業者の持ち株比率を見ると、だいたい40%から多くて60%の間というのが実情である。

 ここでオーナーにとって重要なのが、株を手放したり、自分の持ち株比率を下げたとしても、権利の行使である過半数の株式を堅持することだ。これが第二段階の手放し方になる。過半数の株式を持っていれば、株主総会で普通決議を行うことができる。新しい会社法では取締役の解任は普通決議で行うことができるので、51%の株式を保有したオーナーが現経営陣について不満であれば、株主総会で全員を解任し、まったく別の経営陣と取り替えることが可能になる。

 これがクックパッドで問題になったケースである。クックパッドの場合、オーナーが43.6%の株式を押さえていたうえでプロキシーファイト(議決権行使にかかる株主の委任状争奪戦)をしかけ、経営陣を入れ替えようとしたのだ。

 オーナーが43.6%の株式を持っていれば、あと6.4%超の株式を抑えるだけで51%に到達する。経過を省いて結果を記すと、クックパッドはオーナーの意向で新しい社長をトップに据えることになった。

 結局のところ、オーナーが過半数近くの株式を持っている会社では、いくら上場企業だといっても、法律的に見ても、実態的な創業家の乱の結果から見ても、オーナーの一存で経営はどうにでもなる。一般株主は「オーナーに投資をした」と考えなければ割り切れないことが起きてしまうことがある。

 その是非を論じるのは後段で行うとして、先に第三段階を確認しておこう。オーナーが半分以上の株式を手放したとしても、3分の1の株式を手元に残しておくと、特別決議を単独で阻止することができる。

 出光創業家の例がこのケースで、持ち株比率は半分を割り、すでに創業家から取締役会にメンバーを送ることはできなくなっている。しかし、経営に直接口を出すことはできないものの、経営陣が提案する昭和シェルとの合併については拒否権を発動することができる。なぜなら株式の併合は特別決議が必要な事項だからだ。

 まさしく、今実際に起きているのがこれである。企業経営としては合併によってスケールを求めたほうが業界内の生き残りとしては適切な打ち手だったとしても、それにより持ち株比率が3分の1よりも少なくなってしまえば、創業家としての拒否権を失ってしまう。出光では創業家が合併反対に転じている。