美術科の教員がイラストを作成した国際バカロレア(IB)の学習者像。校内の至る所に掲示されており、生徒はここに示された10の取り組みを常に意識しながら学んでいく

坂井英夫(さかい・ひでお)
東京学芸大学附属国際中等教育学校副校長、修士(教育)


1963年生まれ。東京学芸大学D類理科卒業。理科教員(高校化学)として神奈川大学附属、品川女子学院を経て、東京学芸大学附属高等学校に。この間、同大学院で理科教育学を学ぶ。2020年より現職。著書に『実験問題35』(エスイージー出版)。

 

帰国子女教育の経験が生きるIB校のショーケース

――坂井先生がこちらに来られたのはいつですか。

坂井 東京学芸大学附属高校で化学の教員として23年間教えた後、副校長としてこちらに来たのが2020年のことです。この春に16回生が入ってきました。1回生は現在28歳で、まだまだ若い学校です。

――他校を経験した上で、こちらに来て驚かれたことはありますか。

坂井 レポートにおける剽窃(ひょうせつ)行為に対して生活指導が行われたことに驚きました。

  日本の小学校では、調べ学習の延長でネットの記述をそのまま写しても、よく頑張ったと評価されることはよくあります。本校では「学問に対して誠実であれ」と、まず先生方が常に言われることが印象に残っています。「きちんと文献を引用しないといけない」と言い続けているところが独特だなと。生徒もそういう点については真剣に対応しています。

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――学者の卵を養成するようなところがありますね。

坂井 小さい頃からそういうことを教えていることがすごいなと思います。

――他の国立の付属校は、東京大学附属中等教育学校と筑波大学附属駒場を除けば、小中高それぞれに校長がいます。中等教育学校として中高一貫教育を行っている本校は独特の存在ですね。

坂井 もともと大泉は、帰国子女の受け入れではパイオニア的な存在でした。同窓会は附属大泉中学校の泉旺同窓会と附属高校大泉校舎同窓会、そしてこの中等教育学校の啓泉会と3つあります。探究活動を行う時など、それぞれの団体から卒業生が協力してくれます。

――国の方針で国際バカロレア(IB)のショーケース的な役割を担うことになったわけですか。

坂井 最終的に大学が本校をIB校とすることを決めました。IB教育にはおカネがかかります。大学も予算が年々減少する中、なかなか苦しいのですが。国公立校でIBを導入しているところは、東京では都立国際高校など限られています。安価で良質なIB教育を受けられることが本校の一番の特徴です。

――スーパーグローバルハイスクール(SGH)と、2019年からはスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の両方に指定された学校は、全国的に見ても珍しいですね。

坂井 資金的な面もありますが、この学校の存在を世に知らしめるため、応募できるものには応募しましょうという先生方の熱い思いがありました。

――いろいろな意味でモデル校です。国際系というと女子の人気が高そうですね。

坂井 附属大泉小学校からの連絡進学生はおよそ男女半々ですが、在校生の6割から6割半が女子です。応募者も女子が多少多めですね。

 1年生の定員は105人で、附属大泉小学校、海外からの帰国生および外国籍生徒、日本の小学校を卒業した生徒が、それぞれおよそ3分の1ずつを占めています。

――ずいぶん少人数ですね。

坂井 少人数クラスのため、ゆったりとした授業を受けることができます。語学の授業はさらに2つ以上に分けて行ったりもしています。その後、半年ごとに海外からの帰国生が入ってきて、卒業時には130~135人くらいになる感じです。

日本の国公立学校では初となるIB認定校。1~4年生は全員、ミドルイヤープログラム(MYP)を学び、1割ほどの生徒は5・6年生でディプロマプログラム(DP)を学び、海外大学にも通用する卒業要件を満たすことに