野口悠紀雄
第40回
財貿易統計によると、2012年度上半期(4~9月)の貿易収支は3兆2190億円の赤字となった。これによって、経常収支の黒字も縮小する。これをめぐる議論の中には、誤りに陥っているものもある。その一つとして、国債消化との関連に関するものがある。

第39回
中国に対する日本の輸出が減少していることを述べた。日本の鉱工業生産指数はさらに落ち込む可能性が高い。対中輸出は、現在の日本経済で最大の下振れ要因となっている。したがって、その減少がいかなるメカニズムで生じているのかを知ることが重要だ。

第38回
日本の鉱工業生産指数は、7月、8月とも対前年同月比でマイナスになった。原因は、日本の対中輸出減少だとされる。そして、その原因は、ユーロ安によって中国の対EU輸出が減速していることだとされる。本稿ではこの理解が正しいものかどうかを検討する。

第37回
「リスクオフ」によって投資資金が南欧国債から日米独の国債に流れ込んでいる。しかし、これが起きたメカニズムや経緯は、はっきりしている点と、よくわからない点がある。本稿では2つの疑問点を挙げ、それに対する「大胆な仮説」を立てて考えてみたい。

第36回
日本銀行が追加金融緩和に踏み切った。ヨーロッパ中央銀行(ECB)、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)に続く緩和措置である。追加緩和は、今年4月以来5カ月ぶりのことだ。35兆円で始まった「資産買入基金」は、80兆円まで拡大したことになる。

第35回
FRBが、金融緩和措置の第3弾であるQE3に踏み切った。注目されるのは、「労働市場の先行きに十分な改善が見られるまで、適切な手段を取る」とされたことだ。しかし、この目標は達成できないだろうと考えられている。

第34回
ヨーロッパ中央銀行が南欧国債の無制限買い入れを決定した。これは、ESMの基金を積み立てて国債を購入する方法から、通貨を増発して購入する方法への転換だ。これにより、ユーロは弱くなる。この観点から今回の決定の意味を考えることとしよう。

第33回
イギリスの対外資産・負債のパタンは、日本やアメリカとかなり異なる。イギリスの国際金融は、国内金融とはほぼ切り離された存在だ。外国から資金を調達し、それを外国で運用しているのだ。対外負債が資産とほぼ同じだけあることが、それを物語っている。

第32回
ギリシャ国債(10年債)の利回りは、2012年の初めに35%という異常な水準に達した。しかし、急騰したのは比較的最近のことである。スペインやイタリアの国債の利回りも同じような動きを見せた。なぜ最近になってこうした変化が生じたのだろうか?

第31回
アメリカを中心とした国際的資本移動を見ることにより、金融政策や金融情勢と資本移動の関係を見ることができる。アメリカと全世界の関係を一括して見るより、相手国との関係を見ることによって、そうした姿が浮かびあがる。

第30回
前回、短期証券投資の形で、イギリスから日本へ巨額の資金流入が2011年にあったことを述べた。これは、世界的な資金の流れが「リスクオフ」の方向を向いていることの反映である。以下においては、「リスクオフ」の流れがいつまで続くのかを考えることとしよう。

第29回
6月末の欧州連合(EU)首脳会議で、スペインの銀行支援に関する合意がなされたため、金融市場は小康状態を続けてきた。しかし、ここにきて警戒が再び強まっている。

第28回
前回、「時間軸効果」について述べた。「量的緩和政策は経済の実態面には直接の効果を与えなかったが、時間軸効果の点では有効だった」というのが日本銀行の立場である。この問題を、もう少し論じよう。

第27回
アメリカの量的緩和政策は直接的効果は認められるが、実物経済への影響はほとんど認められない。ただし、マネタリーストックは増えた。つまり、銀行の貸出が増えて、信用創造のメカニズムはある程度働いた。では、そのマネーは、どこに行ったのだろうか?

第26回
FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が一層の金融量的緩和(QE3)を行なうべきだとの声がある。それが行なわれれば、アメリカ経済や世界経済は好転するのだろうか? それを知るためには、これまで行なわれた量的緩和策(QE1、QE2)の効果を見ておく必要がある。

第25回
日本銀行による金融政策が、これまでどのように行なわれてきたかを振り返ってみよう。かつての日本では、市中金利は「公定歩合」と連動するように規制されていた。日銀はこれを操作することで金融政策を行なってきた。

第24回
金融政策を論じる際に参照する指標には、いくつかのものがある。それらは、量的な指標と、価格に分けられる。量的な指標の基本は、マネタリーベースとマネーストックだ。これらについて説明しよう。

第23回
これまで、量的金融緩和政策が物価動向に影響を与えなかったことを見てきた。他方において、日本の消費者物価が長期的・継続的に下落しているのは事実である。では、なぜ物価が下落するのであろうか?

第22回
日本の長期不況の原因は金融政策にあるとし、緩和政策を取るべきだとの意見は、外国からも日本の政策当局に寄せられた批判だった。しかし、量的緩和政策の結果を見て、「量的緩和政策は効果がなかった」と認めざるをえなくなった。

第21回
いま「日本国債バブル」と呼びうる状況だが、日本の財政状況がきわめて悪いにもかかわらず、国債に対する需要が大きいのは、不自然である。これはヨーロッパの金融危機がもたらした異常な事態であるが、日銀による国債購入がバブルをあおっている面も否定できない。
