小栗勘太郎
第58回
「ロータスの伝説」は、1973年、サンタナ初来日の際の実況録音盤です。この音盤は、音楽が融合する瞬間を捉えています。ここには、ロックもラテンもジャズもファンクも、西洋も東洋もあります。

第57回
日本経済が「失われた10年」に突入したころ、宇多田ヒカルという一人の天才が颯爽と登場し、日本の音楽シーンを激しく刺激し、そして鮮やかに舞台から退きました。其処には自由の息吹と音楽の魔法が満ちていました。

第56回
「展覧会の絵」と言えば、ロシア人作曲家の作品の中でも、最高峰に列せられる一品。夭逝した親友の作品からインスピレーションを得ました。この名作中の名作も、実は生前は一度も演奏されることがなかったのです。

第55回
ジャミロクワイの音楽は、一般的には、アシッドジャズと分類されます。が、ジャミロクワイの音楽を一つのジャンルに閉じ込めるのは不可能です。世界中の音楽の『美味しいとこ取り』したような趣すらあります。

第54回
アルバムの標題曲“モーニン”はジャズに詳しくない人でも、絶対に知っているはずです。ジャズ史に残る名曲。魅力的な主題に続いて繰り広げられる妖しく媚薬めいた即興演奏。たまらなく刺激的です。

第53回
RCサクセションが日本のロック界に果たした歴史的な役割は、モーツァルトがドイツ語オペラを創設したのと同じです。英米で発展してきたロックに日本語を完全に載せ、毒を発する反骨精神が宿るロックの奥深い楽しさを教えてくれます。

第52回
「ライブ・イン・東京1970」は、ジョージ・セルの生涯最後の録音です。仕事一徹の頑固者が最終的に到達した部下との真の信頼関係。セルを聴いていると、仕事愛と自己主張も悪くない、と感じます。

第51回
2013年は、クイーンが正式にデビューして40周年です。4人のメンバー創り上げた万華鏡のような音楽世界は圧倒的です。娯楽の音楽・ロックを、ここまでの進化させたことは、まさに驚嘆に値します。

第50回
誰にでも初めて聴いた時の瞬間を憶えている音楽があるものです。パット・メセニー・グループの「アメリカン・ガレージ」を、初めて聴いた瞬間を表せば、緑の草原に一陣の風が吹いて雲を吹き飛ばし……というような感じです。

第49回
年の瀬には様々なコンサートが行われますが、特別なのは、やはりベートーベンの「第九」です。構想から完成まで30年。交響曲の形式に果敢に挑戦し、音楽の自由度を大幅に拡大し、シンフォニーに革新をもたらしました。

第48回
12月8日は、ジョン・レノンの命日でした。帰らぬ人となってから32年。商魂逞しい音楽業界も、比較的静かな感じです。そう意味では、静かにジョン・レノンに思いを致すのにちょうど良い時期かもしれません。

第47回
いまから41年間への1971年にどんな事があったでしょうか。実にいろいろなことがありましたが、日本の洋楽マーケットでは、フレンチ・ポップスの人気が盛り上がりました。主役はミッシェル・ポルナレフ。シャンソンの伝統+ロックの洗礼=フランス風ロックが一大旋風を巻き起こしました。

第46回
R.E.M.は、しばしば“世界で最も重要なロックバンド”といった描写をされます。彼らは、ロックの原点に立ち返って、日常や常識やオトナの枠から独立した自由な音楽を奏でました。精神性と音楽性の高い融合を実現しています。

第45回
今日の1枚「ラプソディ・イン・ブルー」は、クラシックとジャズが運命的に出会い、激しい恋に落ちて誕生した音楽の結晶です。当時“シンフォニック・ジャズ”という造語を生み、20世紀の音楽の大きな潮流となりました。

第44回
秋の気配が濃厚な今日この頃です。そんな時に聴きたくなるのは、肩の凝らない癒しの要素が詰まった音楽。そうボサノバです。今日の1曲「イパネマの娘」は、世界で2番目に多くカヴァーされている曲として知られています。

第43回
日本でも高い人気を誇った米歌手アンディ・ウィリアムスさんが死去しました。享年84。日本のファンを魅了したのは、声と歌唱力に加えてあの人柄です。彼のヴェルヴェット・ヴォイスは、時代を超えた普遍性を持ち、人々の心を軽くし、癒してくれました。

第42回
今日の1枚「石と薔薇」は1989年に発表されました。日本ではバブルの絶頂、世界ではベルリン壁が崩壊した年です。2006年には英国の音楽雑誌で、史上最高の英国のアルバムに選出されました。まさに怪物です。その怪物的な新しさの秘密は、コンビネーションの妙にあります。

第41回
シューベルト、と言えば、一般的なイメージは、「歌曲の王」ですが、「交響曲第9番ハ長調ザ・グレイト」は歴史上の全ての交響曲の中で、どの傑作に勝るとも劣らない屈指の名交響曲です。「真理は単純で美しい」という言葉を思い起こさせる1曲、そして多くの疑問と逸話に包まれた1曲でもあります。

第40回
夏の音楽と言えば、絶対にレゲエです。レゲエと言えば、絶対にボブ・マーリーです。何故ならば、ボブ・マーリーこそがレゲエの真の凄さを世界に知らしめた男だからです。そしてこの実況録音盤「ライブ!」こそ、レゲエが英国人の魂を鷲づかみにして、世界のレゲエになった瞬間を刻んでいます。

第39回
コルトレーンと言えば、硬い、孤高、難解、暗い、前衛といったイメージがあるようです。しかし、この1枚を聴けば、そんな既成のイメージは覆るはずです。恋愛話を酒を片手に旧友に語るがごとくに、愛をめぐる様々な旋律を歌心一杯にテナーで奏でます。
