小栗勘太郎
第78回
ビリー・ジョエルにとって1964年2月9日は運命の1日となりました。その日から彼は本気でロック・ミュージシャンになると決心。が、成功までは茨の道のりでした。「ピアノ・マン」はピアノの弾き語りをやって日銭を稼ぎ、世間を見つめているピアノ弾きが描かれています。

第77回
今週の1枚「Progress」はNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」のテーマ曲です。番組開始から7年も経つのに飽きないのは、この曲が強靭なポジティブさ、心地よき律動、編曲の妙を持ち、言葉と旋律がこれ以上は望めない幸福な結婚をしているからです。

第76回
今週の1枚はベトナム戦争の真っ最中に発表されたニール・ヤングの「ハーヴェスト」。ヒューマンな優しい眼差しと政治の欺瞞に対する激しい告発が共存し、ヘタウマ的な要素を内包した歌と演奏が輝きを放っている。

第75回
今週の1枚は、二人の天才の出会いが生み出したものです。映画音楽を多く手掛けた大作曲家と現代最高のチェロ奏者の出会いが、過剰なまでに美しい旋律が比類なき芳香を有する音色を生み出しました。

第74回
日本時間12月6日、南アフリカの人種隔離政策アパルトヘイトとの闘い、同国初の黒人大統領となったネルソン・マンデラが逝った。今週の音盤は、獄中にあったマンデラを支援する反アパルトヘイトで結集した音楽家たちが創り上げた「サンシティ」です。

第73回
今週の音盤は、21世紀の歌姫アリシア・キーズの初のライブ盤「アンプラグド」です。彼女の音楽家としての核は多様性です。「アンプラグド」は女性アーティスト初のビルボード初登場1位を獲得。音楽性と商業性の両方を兼ね備えた音盤は稀有な1枚です。

第72回
今週の1枚・メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」は、世に三大ヴァイオリン協奏曲と言われています。しかし、この表現は本質を衝いている訳でもありません。何故傑作中の傑作であるのかを解き明かしてみましょう。

第71回
今週の一枚は発売されたばかり。この一枚を発表したエルトン・ジョンは御年66歳です。手練手管の老獪な技法とは無縁。心の奥底から湧き上る衝動を、ただただ自分らしく曲に創り込み歌っています。

第70回
世に『10で神童、15で才子、20歳過ぎればただの人』と言います。が、上原ひろみには、20歳を過ぎてもただの人にはならない眩い才能があります。もちろん、それは稀有なものです。今週の1枚「アナザー・マインド」は聴く者に霊感を与え、元気を与えます。

第69回
「ホワッツ・ゴーイング・オン」は、ベトナム戦争真っ最中の時代にリリースされました。それまでマーヴィン・ゲイは愛を謳う歌手でした。それが反戦歌に舵を切ったのです。その背景には深い喪失と創生の物語があります。

第68回
今週の1枚は「JSバッハ・無伴奏チェロ組曲」は「チェロの旧約聖書」と言われています。ただ巨匠カザルスとこの曲の出会いは偶然でした。この偶然とカザルスの研鑽がなければ、「チェロの旧約聖書」にまで上り詰めることはなかったはずです。

第67回
ご存知のようにポール・マッカートニーはビートルズ時代に絶頂を極めました。その凄さはビートルズ解散後も、幾度も無尽蔵の創造力を爆発させたことです。「バンド・オン・ザ・ラン」は、いくつもの厄災を乗り越えて作り上げられたポールの世界です。

第66回
今週の1枚・高中正義の「ブルー・ラグーン」は歌のないギターが主役の希有なヒット曲です。高中は、ギターを歌わせるという点で非常に優れたギタリストで、歌手が声で歌うように、高中はギターで歌っています。

第65回
音楽で暑気払いなら、レゲエで決まりです。というわけで、今週は、ジミー・クリフが主演し音楽も担当した映画「ハーダー・ゼイ・カム」のサントラ盤です。レゲエという音楽とレゲエを生み出したジャマイカ社会の現実を赤赤裸々に描いています。

第64回
今週の音盤は誰もが聴いたことのあるあのメロディー「パッヘルベルのカノン」です。真理はやはりシンプルで美しい。まさに音楽の公理を体現した1曲です。

第63回
ジャズは常に夜の音楽でした。それに朝を持ち込んだのがチック・コリアの今週の1枚です。この1枚を聴くと、いわば、ルネッサンス期の前と後で絵画が完全に変わったことを彷彿とさせます。

第62回
ジョージ・ハリスンはビートルズの中でも、静かなギタリスト言われる存在でした。ジョンとポールという天才のそばにいて自分をに磨き、ビートルズ解散後、ソロ・デビュー作にしてLP3枚組の大作を発表します。それが今週の1枚です。

第61回
今週の音盤は、吉田拓郎「元気です」。今週の音盤に選らんだ理由は二つです。第1に日本の音楽シーンに革命を起こしました。第2に、1970年代の時代の空気を極めて高い鮮度を保ったまま、今に伝えているからです。

第60回
エリック・サティという作曲家は、“異端児”とか“変人”と称されることもあります。そのサティが名門・パリ音楽院を退学し、兵役を経て、モンマルトルでピアノ弾きで生計を立てながら作曲したのが、今週の1曲です。

第59回
「サキソフォン・コロッサス」は、ジャズ・ジャイアントのソニー・ロリンズが若くして到達した彼の最高傑作の一つです。才能あふれ若くして頭角を現したロリンズですが、強烈なスランプを経験して名盤を生み出しているのです。
