2023.3.2
「植田日銀」でゆっくり大きく変わる金融政策、マイナス金利やYCCはいずれ撤廃
日銀の新総裁候補、植田和男氏の国会での答弁から判断すると、日銀はゆっくりながら金融政策を大きく修正するとみられる。マイナス金利政策やYCCといった緩和の枠組み見直しなど「3つの優先課題」が浮上する。
野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト
きうち・たかひで/1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。著書に『異次元緩和の真実』(日本経済新聞出版社)、『金融政策の全論点』(東洋経済新報社)、『決定版 銀行デジタル革命』(東洋経済新報社)、『トランプ貿易戦争』(日本経済新聞出版社)、『世界経済、最後の審判 破綻にどう備えるか』(毎日新聞出版)、『プラットフォーム経済圏 GAFA vs. 世界』(日経BP)(2019年5月27日発売)がある。
2023.3.2
日銀の新総裁候補、植田和男氏の国会での答弁から判断すると、日銀はゆっくりながら金融政策を大きく修正するとみられる。マイナス金利政策やYCCといった緩和の枠組み見直しなど「3つの優先課題」が浮上する。
2023.1.20
金融政策の正常化は新総裁体制でYCCの金利変動幅再拡大と物価目標の見直しを先行した後、マイナス金利解除へと進むが、YCCは温存される見通し。米景気などの動向次第では正常化は24年半ば以降に後ずれも考えられる。
2023.1.11
防衛費増強の財源とされる増税は「24年度以降に」先送りされ、歳出削減も不透明な一方で、艦艇などの建造にタブーとされた建設国債が充てられる。なし崩し的な国債増発リスクが高まる。
2022.12.1
FTXの破綻は、コロナ禍の巣ごもりや超低利による暗号資産ブームの終焉(しゅうえん)を象徴するが、次は超金融緩和下で資金を集めてきたハイイールド債などの高リスク資産が大きな価格調整に見舞われる可能性がある。
2022.11.10
政府は「資産所得倍増計画」でNISAの抜本拡充を打ち出したが、成果を出すには、金融教育や金融機関教育、企業の成長力を強め株式投資の期待収益率を高める成長戦略を一体となって進める必要がある。
2022.9.28
円安が加速する中、政府が行った円買い介入は日本の単独介入であり円買いは外貨準備の制約があるため効果は限定的だ。米国が景気減速で利上げを縮小するまでの時間稼ぎの要素が強い。
2022.9.2
「歴史的物価高」は、ウクライナ戦争長期化でコストプッシュインフレに対して主要国が利上げや通貨引き上げを競っている状況を考えると、景気減速という犠牲を払う形で収束するシナリオが現実的だ。
2022.8.4
FRBの利上げや「テラUSD」の暴落を引き金に暗号資産の時価総額はピークの3分の1に縮小している。市場参加者が多様化する中で今回の調整局面は金融システムへ波及するリスクもはらむ。
2022.7.6
参院選で各党が掲げる物価高対策は「バラマキ」の色彩が強く財源も不明だ。金融政策を修正し円安を抑制する一方で、成長戦略強化で生産性を高め物価高に対する耐性を強めることが正攻法だ。
2022.6.3
ウクライナ戦争による成長減速が顕在化し始めたが、今後、対ロ制裁が強化されればロシアは資源大国の地位を失う可能性がある一方で、世界経済もエネルギー価格高止まりなどによる「両刃の剣」のリスクを覚悟する必要がある。
2022.5.11
約20年ぶりの円安は内外金利差の拡大が底流にあるが、日銀は「円安は日本経済にプラス」として緩和政策を維持する。だが貿易構造の変化やコロナ禍で内需産業の打撃の大きいことを考えれば円安加速のリスクに目を向けるべきだ。
2022.3.30
利上げ開始で金融政策正常化に踏み出したFRBだが、今後の利上げを急速なペースで進めるとの予想が強い。だが短めのタームのイールドカーブを重視するやり方は景気を冷やし過ぎるリスクがある。
2022.3.2
岸田首相の「新しい資本主義」は株主重視から「ステークホルダー資本主義」への移行と賃金低迷問題の解決をセットで目指しているようだ。だが企業統治の問題に政府が関与するのは注意が必要だ。
2022.2.1
インフレ圧力が強まる欧米に比べ日本の消費者物価が落ち着いているのは、日本企業が値上げや雇用・賃金政策に慎重なことがある。だが物価安定が日本の「弱み」に転じる可能性がある。
2021.12.27
2022年の世界経済の安定した回復の鍵を握るのは物価と金融政策正常化の動きだが、懸念されるのは、物価高騰が予想以上に長引きFRBが景気を犠牲にして利上げを進めざるを得ない状況になることだ。
2021.11.29
賃金引き上げ策で重要なのは、日本経済の成長力や労働生産性を高め、企業が自ら賃金を引き上げる環境を作ることだ。無理に強いれば潜在成長率が損なわれ、結局、賃金上昇が妨げられる。
2021.11.2
FRBが11月にも量的緩和の縮小を始めると予想されるが、市場が準備すべきはその先の利上げ開始だ。長い緩和でバブル化した金融資産市場の急落や新興国からの資金流出が懸念される。
2021.9.30
岸田新政権の経済政策は財政・金融総動員の「安倍カラー」が薄れ、潜在成長力引き上げが最優先課題になる。「成長と分配の好循環」を掲げるが、まずは「成長」を実現する戦略が重要だ。
2021.9.8
菅義偉首相の自民党総裁選不出馬表明を受けて、市場は円安・株高となった。来る衆議院議員選挙で自民党大敗のリスク低下を好感したと思われる。現在、立候補を表明、または検討している候補者の経済政策について予測、分析してみた。
2021.9.1
日本銀行が始める「グリーンオペ」は気候変動問題対応の世界の潮流に合わせたものだが、やれる手段は限られており、下手をすれば本来の責務の物価目標の達成には矛盾することもあり得る。
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