神田慶司
新型肺炎で落ち込むインバウンド消費、日本人の活動自粛が追い打ち
新型コロナウイルスによる感染拡大への懸念が強まっている。日本経済への悪影響は、訪日外国人旅行(インバウンド)で顕在化した。2020年2月の訪日中国人旅客数は執筆時点で明らかではないが、春節前後40日間における中国人の海外旅客数は前年同期から半減した。日本の百貨店大手の春節期間の免税売上高は、前年同期比2桁のマイナスが目立つ。

増税後の消費の腰折れは回避、子育て世帯の負担は減少
家計の購買力は消費増税後もさほど低下していないようだ。世帯の平均的な生計費を表す消費者物価指数(CPI)の前年比伸び率は、価格変動の大きい生鮮食品とエネルギーを除いて、2019年10月に前月から0.2%ポイント高まった。14年4月の前回増税時に1.8%ポイント高まったことに比べると、物価の上昇幅はかなり小さい。

時給の上昇で強まるパートの就業調整、企業の家族手当が障害に
パートタイマーの就業調整が強まっている。パートタイマーの労働時間は、時給の上昇に反比例して減少する傾向が見られる。人手不足が深刻化する中、最低賃金の積極的な引き上げもあり、パートタイマーの労働時間は第2次安倍内閣が発足した2012年12月から19年7月の間に1割近く減少した。

10月から消費税率が10%に上がったが、このままでは2040年度には「消費税率18~20%」の時代になる可能性がある。議論が始まった「全世代型社会保障改革」ではこの重要なポイントが抜け落ちている。

増税時のポイント還元策は消費を下支えするものの終了後に“反動”の可能性
キャッシュレス決済時のポイント還元制度が、消費増税対策として2019年10月に実施される。期間は20年6月までの9カ月間。参加する中小の小売店や旅館、生協等の各種組合、コンビニ等のフランチャイズチェーンなどでキャッシュレス決済を行うと、最大5%のポイントが消費者に還元されるのだ。

国際的に見て低いとは言い切れない最低賃金 過度な引き上げには弊害も
最低賃金の引き上げに向けた議論が加速している。2019年6月に閣議決定された骨太の方針では、18年度で全国加重平均874円の最低賃金について、1000円の早期実現を目指す考えが示された。

統計では悪くない平成の日本経済令和の課題は財政持続性
平成が幕を閉じた。この30年間の日本経済を振り返り、低迷した時代だったといわれることが多い。しかし、意外かもしれないが、統計から見た平成の日本は「失われた30年」では決してなかった。

低い賃上げ率の背景に労働生産性の伸び悩み職務無限定の働き方も課題
春闘では6年連続でベースアップ(ベア)が実施されそうだ。日本労働組合総連合会(連合)が2019年3月22日に集計した結果によると、定期昇給込みの賃上げ率は2.13%である。ベアの金額が明確な労働組合に絞った集計では、ベアによる賃金上昇分は0.62%だ。
