
神田慶司
総合経済対策は「規模ありき」の要素が色濃く、とりわけ総額6兆円のガソリンや電気・ガスへの補助金は、コロナ禍での家計の過剰貯蓄の存在を考えると低所得世帯に絞るべきで、費用対効果が少ない政策だ。

インバウンド(訪日外国人)の回復が水際対策で妨げられている。岸田政権は2022年9月7日に水際対策を緩和した。入国者数上限を1日当たり2万人から5万人に引き上げ、ワクチン3回接種を条件に陰性証明の提出を不要にするなどした。だが、緩和後も訪日ビザを取得しなければならず、受け入れはツアー客に限られる。

新しい資本主義の実現を掲げる自民党は、2022年7月10日投開票の参議院議員選挙で大勝した。岸田政権は今後、景気動向に目配りしつつ、6月に閣議決定した新しい資本主義の実行計画に基づいた取り組みを加速させるだろう。実行計画では「人への投資と分配」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ(新興企業)」「脱炭素・デジタル化」の4分野に重点投資することなどが示された。

インフレの高進が世界的課題となっている。コロナ禍からの経済活動の回復に供給が追い付かず、原油や小麦、金属など幅広い資源の価格が高騰した。さらにロシアのウクライナ侵攻が資源高に拍車を掛けた。

インフレの高進が世界的課題となっている。コロナ禍からの経済活動の回復に供給が追い付かず、原油や小麦、金属など幅広い資源の価格が高騰した。さらにロシアのウクライナ侵攻が資源高に拍車を掛けた。日本では、2022年4月の消費者物価指数は生鮮食品を除くベースで前年比+2%程度に達する見込みである。

ウェルビーイングは、経済社会の豊かさや人々の生活の質、満足度などを表すが、一国の課題を多面的に検討する上でも重要な指標だ。これに関連するものに、経済協力開発機構(OECD)の「ベターライフ・インデックス」(BLI)がある。

全世代型社会保障の実現は岸田政権の重要課題だ。現在の社会保障制度は、少子高齢化の進展などにより制度疲労を起こしている。同じ年齢でも、生まれた年が遅いほど保険料負担が重く、給付水準が低い。財源の一部を国債発行に依存しているため、財政を慢性的に悪化させている。

資源高が景気回復に冷や水を浴びせている。エネルギーや農産物、金属など幅広い資源の価格が上昇し、円安がこれらの輸入コストを一段と押し上げている。

岸田政権が発足した。所得分配を重視する「新しい資本主義」の実現を目指すという。これは渋沢栄一氏が唱えた合本主義がベースにある。一部の人に富が集中するのではなく、公益を重視し、社会全体で豊かになる経済システムである。

財政健全化目標はまた先送りされるのだろうか。2021年6月の骨太方針では、政府が25年度の達成を目指している、国・地方の基礎的財政収支(PB)黒字化の目標年度を再確認することが明記された。

最低賃金の改定に向けた議論が本格化している。2021年の骨太の方針の原案では、「感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引き上げが不可欠」「より早期に全国加重平均1000円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む」とされた。

追加経済対策の議論が始まりそうだ。多くの地域ではコロナ感染が再拡大し、飲食店の時短営業や不要不急の外出自粛などが長期化している。欧州で猛威を振るう変異株は日本国内でも広がってきた。

緊急事態宣言の再発出により、景気は急速に悪化している。ただし高頻度データ等で足元の動向を確認すると、景気悪化の度合いは前回宣言時よりも小さくなりそうだ。

Go To キャンペーンが感染拡大を受けて見直された。本稿執筆時点で、トラベル事業では大阪市と札幌市への旅行が一時除外された。イート事業でも、政府は都道府県に対してプレミアム付き食事券の新規発行の停止などの検討を要請した。

菅義偉内閣が発足した。これを機に、7年8カ月続いた安倍内閣の経済運営への評価が各方面で行われている。その中で、家計は実質賃金が低下して豊かにならなかったとの指摘があるが、統計データを詳しく見ると実態は大きく異なる。

テレワークが広がっている。緊急事態宣言が発出されたことで、在宅勤務などに切り替える企業が相次いだ。宣言解除後に通常勤務に戻す動きが見られたものの、感染再拡大への懸念が強まっており、テレワークを維持する企業は多い。

人出の回復が鮮明になっている。緊急事態宣言の全面解除により、不要不急の外出自粛は緩和され、飲食店や百貨店、映画館、遊園地などの多くは営業が再開された。

現金10万円が全国民に給付される。当初は生活困窮世帯に対して1世帯当たり30万円を給付する方針だったが、閣議決定後に見直された。

新型肺炎で落ち込むインバウンド消費、日本人の活動自粛が追い打ち
新型コロナウイルスによる感染拡大への懸念が強まっている。日本経済への悪影響は、訪日外国人旅行(インバウンド)で顕在化した。2020年2月の訪日中国人旅客数は執筆時点で明らかではないが、春節前後40日間における中国人の海外旅客数は前年同期から半減した。日本の百貨店大手の春節期間の免税売上高は、前年同期比2桁のマイナスが目立つ。

増税後の消費の腰折れは回避、子育て世帯の負担は減少
家計の購買力は消費増税後もさほど低下していないようだ。世帯の平均的な生計費を表す消費者物価指数(CPI)の前年比伸び率は、価格変動の大きい生鮮食品とエネルギーを除いて、2019年10月に前月から0.2%ポイント高まった。14年4月の前回増税時に1.8%ポイント高まったことに比べると、物価の上昇幅はかなり小さい。
