医薬経済ONLINE
自民党厚労族の重鎮、伊吹文明元衆院議員の引退で官邸への「抑止力」を失い、田村憲久厚労相と加藤勝信官房長官は、閣僚の重責で手いっぱい。ツートップの次を担うことが期待される中堅議員3人も心許ない状況と言える。製薬業界にとっての救世主が、自民党から現れる気配はない。
      
    
スイスのメガファーマ、ノバルティスが製造販売する降圧剤「ディオバン」で13年に発覚した虚偽広告を巡る事件。1審、2審の無罪判決を不服とした検察側は最高裁判所に上告したが、最高裁は6月28日にそれを棄却し、無罪が確定した。製薬業界と医学界を揺がし、法改正にまで影響をもたらしたディオバン事件だが、無罪となったのはなぜなのか。
      
    
かつてソフトバンクの孫正義氏の右腕とも呼ばれた北尾吉孝氏が率いる「SBIグループ」と、「ネオファーマジャパン」がサプリメントの工場をめぐって奪い合いを演じている。そのサプリメントとは「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」という天然アミノ酸。北尾氏がこの5-ALAに着目し、「SBIアラプロモ(現SBIファーマ)」を設立し、医薬事業に進出。サプリメントとして発売していた。この5-ALAが急に注目されたのは20年10月。長崎大学が「新型コロナウイルスの増殖抑制効果が認められたことから臨床研究を始める」と発表したことだった。にわかにSBIグループが原薬を製造しているネオファーマに「提供していた資金の返済が滞っている」と工場に仮差し押さえ処分をかけ、さらに「工場を担保にした債権の譲渡を受けた」と工場の明け渡しを迫り、対するネオファーマ側は「北尾氏の乗っ取りだ」と反発している。
      
    
ロート製薬は30年時点での会社のありたい姿をまとめた「ロートグループ総合経営ビジョン2030」を制定し、このなかで、主力のOTC薬部門に関しては「日本におけるOTC医薬品のリーディングカンパニーをめざす」と宣言していた。痔治療薬「ボラギノール」製造会社の買収は、国内トップ奪取という目標に向けた第1号案件であり、事業上のライバルとなった古巣(アリナミン製薬、元武田コンシューマーヘルスケア)に対するロート製薬社長の復讐の始まりとも位置付けられる。
      
    
地元を代表する後発品企業である日医工で品質問題が発覚したことから、5月中旬、富山県薬剤師会が会員向けにウェブ説明会(非公開)を開いた。日医工の関係者のほか、県くすり政策課の青栁ゆみ子課長が呼ばれた。青栁氏に出席が求められたのは、日医工への行政処分の経緯を聞くためだが、それ以外にも理由がある。日医工に対する査察で「忖度」があったのではないかという疑いからだ。
      
    
お茶の間に「希望と勇気を届ける」働きをしたものと思われる。米国食品医薬品局(FDA)が下したアルツハイマー型認知症(AD)薬「アデュカヌマブ」(製品名、アデュヘルム)の迅速承認というニュースだ。株価も一般投資家を中心とした「買い」の殺到によってまる2日間にわたって取引が成立しない「祭り」となった。FDAの今回の判断を前にして「異例」だの、「政治的判断」だのいった辛気臭い識者の声は、かき消されてしまったが、承認はいわば「仮免」であり、今後エーザイには「審判」が待っている。
      
    
公的な薬価制度に紐づいた「医療用医薬品の流通」が根本から問われているが、誰一人として明確な答えを持ち合わせていない。医薬品卸4社による談合事件の裁判が東京地裁で開かれ、卸業界では、長期間にわたり独占禁止法上で禁じられている「受注調整」が商習慣として定着していた事実が明らかになった。公正な自由競争が絶対との検察官の意見は、至極真っ当で、まったく反論の余地がない。とはいえ、薬価を死守すべく高仕切価を敷く製薬企業と、少しでも多くの薬価差益を得るため常に値引きを要求する医療機関・調剤薬局の間で板挟みに遭う卸の声に耳を傾けると、果たして検察が言うところの「自由経済社会」が本当に存在するのか、と疑問がふつふつと湧いてくる。
      
    
武田薬品が「しぶとい動き」を見せている。代表例は株価だ。昨年3月下旬、新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化とそれに伴う巨額減損への懸念から、同社の株価は一時2900円まで急落した。ところが減損リスクがひとまず遠のくと、安定圏とされる3700円台へと素早く復帰。さらに今年3月に入ると俄かに上昇し、同月22日には4365円の年初来高値を記録した。株価と同様株価と同様に、武田を率いるタケダ・エグゼクティブチームのメンタルも、なかなかしぶとい。
      
    
Eコマースと金融を柱に、通信、スポーツ、医療、そして一時は航空運送業にまで手を伸ばし、商いの領域にとどまらず、社会のインフラ部分をもカバーする楽天グループ。創業者・三木谷浩史氏の才覚と強運によって、創業から四半世紀足らずで足元の連結売上高が1兆4500億円を超える企業集団へと上り詰めた。だが、好事魔多し。楽天グループとその統領は周知のように、各方面から目下、「フルボッコ」の批判を浴びている。医療では光免疫療法とOTC薬(大衆薬)だ。
      
    
業界未経験の弁護士出身者が、後発医薬品メーカー、小林化工の新社長に就任した。投資や知財関連で経験豊かとみられるが、規制に雁字搦めの製薬業界で、どう手腕を発揮するのだろうか。以前小林化工の親会社オリックスに在籍していたことがあり、オリックスの意向が働きやすくなったのは想像に難くない。オリックス幹部の頭の中に「事業譲渡」の四文字はあるのだろうか。
      
    
米マイクロソフトが4月12日、米ニュアンス・テクノロジーを約2兆1500億円(194億ドル)で買収すると発表したことである。ニュアンスはアップルの音声アシスト機能「Siri」の基礎技術を開発した企業として有名だ。だが、実は20年近くにわたって、医師の生産性と作業方法を変革するための音声対応AI型ソリューションを広めてきた実績がある。ニュアンス買収は「デジタルヘルスケアオペレーティングシステム」の設計のための一里塚である。今後も拡大していく遠隔診療やAIを使った業務効率化は、必然の対応だった。
      
    
小林化工、日医工と相次ぐ後発品企業の品質問題をめぐる不祥事で、「ジェネリック」の名称で信用を得てきた後発品が、再び「ゾロ」と蔑まれている。だからと言ってこの2社をとにかく叩けば解決するほど単純ではない。もちろん2社は猛省し、再発防止策を講じる必要がある。しかし、根本原因はこの2社を含めた後発品業界を取り巻く構造的な部分に起因する。20年にわたる後発品使用促進策。つまり、政府の後発品行政の「失敗」に目を向けずに再発防止は図れない。
      
    