クリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)クリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者) Photo by Masataka Tsuchimoto

 武田薬品が「しぶとい動き」を見せている。代表例は株価だ。昨年3月下旬、新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化とそれに伴う巨額減損への懸念から、同社の株価は一時2900円まで急落した。ところが減損リスクがひとまず遠のくと、安定圏とされる3700円台へと素早く復帰。さらに今年3月に入ると俄かに上昇し、同月22日には4365円の年初来高値を記録した。

 その後は再び安定圏内で推移していたが、国内で2番目となる新型コロナウイルスワクチン「モデルナ筋注」が5月21日に厚生労働省より特例承認されると、再び4000円台に向かって伸長する気配を見せた。同社の株式は2019年1月に、シャイアー買収の対価として約7億7000万株が新たに発行され、およそ2分の1に希薄化されていることを考えると、実質的には8000円台をうかがおうかというレベルにある。

 株価と同様に、武田を率いるタケダ・エグゼクティブチームのメンタルも、なかなかしぶとい。最近は心なしか余裕すら感じられるようになってきた。それを端的に示すのが、クリストフ・ウェバー氏が社長に就いて以降毎年のように「対立」し、とりわけ18年初春にシャイアーの買収という大博打に出てからより激しく論戦を繰り広げてきた「武田薬品の将来を考える会」の動向である。今年はかつてなく追及の手が鈍いようだ。6月29日に開催が予定される定時株主総会まであと1カ月を切っても、ウェバー社長らを糾弾するような言動を見せていない。