医薬経済ONLINE
2月初め、警視庁が医療ベンチャー「テラ」株のインサイダー取引容疑で建設会社社長ら3人を逮捕、下旬にはテラと提携した医療コンサルタント会社「セネジェニックス・ジャパン」の竹森郁元取締役も逮捕した。テラは新型コロナウイルス感染症が急拡大した2020年4月、セネジェニックスと共同でコロナ治療薬を開発すると発表。続いてメキシコの子会社が行っていた臨床試験に成功し、メキシコ・イダルゴ州で薬事承認を受けた、と公表した。テラの株価は急騰したが、次々に発表した話が「ウソ」だったことが露見して急落。インサイダー取引はその最中に起こった。

田辺三菱製薬に対し、厚生労働省の「最終ジャッジ」が下ろうとしている。話の発端は、日本製薬工業協会のプロモーションコードに関する「重大な違反」が発覚したためだ。こともあろうに同社は、同協会“次期会長”を意味する統括副会長会社の立場だが、初歩的な自主基準すら守れないという失態を演じてしまった。

いまや“全面戦争”の様相だ。消費者庁と「ラッパのマーク」の正露丸でおなじみの大幸薬品である。1月20日、消費者庁が大幸薬品に対し、同社が販売する二酸化塩素を活用した「クレベリン」商品のうち、置き型以外の4商品について優良誤認させるとして景品表示法に基づく措置命令を行ったと発表した。発表が伝わるや、大幸薬品株はストップ安……。

ジョンマーク・ギルソン社長をトップに戴く三菱ケミカルホールディングス。昨年末発表の経営戦略で大幅な組織改編を示し、主力である石油化学からの実質的な撤退を掲げたほか、最高財務責任者を外部から迎え入れるなど矢継ぎ早の改革を打ち出している。「誰かに似ていないか」。そんな声が社内外を問わず漏れ聞こえてくる。誰あろう武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長のことだ。

東証は1月、各企業が割り振られる新市場の所属先を発表した。製薬業界では1部市場に上場している製薬会社37社中、35社がプライム市場に移行。医薬品卸も1部市場に上場している大手5社が揃ってプライム市場に移る。医薬品業界でスタンダード市場を選択した製薬会社はわずか2社に過ぎなかったが、うち1社は大衆薬最大手の大正製薬ホールディングスだった。

中外製薬にとって正念場かもしれない。同社が横浜市戸塚区に建設する研究施設「中外ライフサイエンスパーク横浜」をめぐる周辺住民との間の軋轢だ。周辺住民が「豪雨の際には遊水地の役割を果たしてくれていた土地に盛土をしたら、周辺の住宅は軒並み床上浸水してしまう。盛土でなく、ピロティ(柱)建築にしてほしい」と要望。願いは聞き入れられず、開発許可を出した横浜市に対し、「開発許可撤回」の行政訴訟を提起した。目下、裁判は佳境を迎えているが、その間に建設工事は進み、すでにビルが完成し、内装工事とビル間の盛土が始まっている。

新型コロナウイルスのパンデミックから2年が経過した。ワクチンや治療薬の開発では欧米大手やバイオベンチャーはもとより、中国にも遅れをとった。当初はアビガンなどの抗ウイルス薬の緊急承認や早急なワクチン開発に向けて、政治・行政と業界が一致団結して動くとみられたが、感染拡大が加速するなかで尻つぼみに終わったと言わざるを得ない。グローバルでの日本企業の存在感は一段と低下、地盤沈下していると言わざるを得ない。

「武田ブランド」が、いま、音を立てて崩れている。開闢240周年を自画自賛する企業ブランディングキャンペーンを、年も押し詰まった昨年12月より慌ただしく展開し出したことが、彼らの「焦り」の度を如実に物語ろう。しかも、「世界に尽くせ、タケダ。」というキャンペーンコピーの文言を何度読み返しても、誰が、誰に当てたメッセージなのかがはっきりせず、心に刺さらない。

2021年12月24日、エーザイの株価は下落し、年初来安値を更新した。6月22日の年初来高値1万2765円から半年間で半値となった。その理由は周知のとおり、日米欧で物議を醸した米バイオジェン/エーザイのアルツハイマー病(AD)治療薬「アデュヘルム」(一般名=アデュカヌマブ)に厳しい判断が突き付けられたからだ。12月22日に厚生労働省が緊急開催した薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は承認を見送った。継続審議扱いのようだが、承認への道は困難を極めるだろう。

「あなたは馬ではない。牛でもない。マジでみんなやめて」。米国食品医薬品局(FDA)は、9月にSNSでこんな警告を発した。駆虫薬「イベルメクチン」の新型コロナウイルス感染症に対する効果を期待するあまり、家畜用製剤にまで手を出さないでという訴えだ。国内でも、ヒト用のイベルメクチンを扱うマルホと、製造元のMSDが頭を悩ませていた。報道が過熱するにつれて、過剰な発注が見られるようになったからだ。

龍角散の藤井隆太社長に「セクハラ」疑惑が持ち上がった裁判は12月1日、和解が成立した。法務担当部長を務めていた女性が不当に解雇されたとして地位確認を求め、2019年に提訴。元部長は藤井社長によるセクハラ疑惑を聞き、社内調査しようとしたところ解雇されたと主張。龍角散はセクハラ疑惑が元部長による「捏造」と否定していた。

アステラス製薬は2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し発足した。ここまでの株式市場や証券アナリストからの評価は、及第点ギリギリだが合併当初の期待には応えていないというのが一致した見方ではないだろうか。そんな同社が新中期経営計画を発表した。

ドラッグストアの成長が足踏み状態となっている。世間が急速に日常を取り戻すなか、ドラッグストアの成長率が鈍化、コロナ禍で既存店が売上げを伸ばした前年度が幻のようだ。「反動は仕方がない」「成長の終わりの始まりか」という両極端の見方が飛び交っている。

円満解決となったのだろうか。11月12日、がん免疫療法薬「オプジーボ」の特許使用料などを巡る訴訟で、小野薬品工業が京都大学の本庶佑特別教授に280億円を支払うことで和解した。ノーベル賞受賞者が原告となり、日本の産学連携のあり方も問われた異例の裁判だった。

眞鍋淳社長が中山讓治・現常勤顧問より経営のバトンを引き継いで以降、第一三共の業績は上昇気流をなかなか掴めず、2021年3月期は減収減益決算を強いられた。今期は好調で売上高1兆円超を予想。自慢の抗体薬物複合体(ADC)に社運を賭ける第一三共にあって、眞鍋社長の采配がようやく効き始めたようにも映る。だが、少なからぬ業界関係者は「否、そう簡単な話でもないだろう」と愁眉を寄せる。

医薬品業界に再び激震が走ったのは11月9日。公正取引委員会はアステム、メディパルホールディングス子会社のアトル、アルフレッサ、東邦HD子会社の九州東邦、スズケン子会社の翔薬、富田薬品の6社に対し、国立病院機構本部が実施した九州エリアの医薬品入札で談合した疑いがあるとして立入調査に入ったのである。

内資同士で手を結ぶものを大勢に、外資や異業種の傘下に入るものも現れた2000年代の国内製薬業界。日本新薬は、07年に第6代社長に就任した前川重信氏(現会長)が「背水の陣」で企業改革に臨んだ。中堅のなかでも下位クラスだったということもあり、メディアは「お手並み拝見」といった冷やかなスタンスだった。日本新薬の「本気」と「異変」に気付いたのは市場関係者のほうが早かった。

「抗生物質といえば塩野義製薬」という時代を知る人は年々少なくなっているのではないだろうか。現在の塩野義はHIVなどの感染症領域と、うつ病や疼痛などの中枢神経系領域を主力とする。そして現代のエピデミックである新型コロナウイルスへの塩野義の取り組みは社運を賭した切迫感が感じられる。

医療機器大手のニプロの21年3月期業績は売上高が前期比2.9%増の4555億円、営業利益が同4.6%増の276億円で、5期連続の増収と3期連続の増益を果たしている。配当も1円増配の29円と積極姿勢を見せており、これらの数字を見る限り優良企業として映る。しかし投資家の姿勢はつれない。有利子負債は年商を上回る5378億円へと膨らみ、自己資本比率は18.8%に落ち込んでいる。そうしたなか、同社は長期ビジョンを改めて掲げ、31年3月期に売上高1兆円達成をめざす

品質不正問題で体制改善が急務の大手ジェネリック(後発)医薬品メーカー「日医工」と医薬品卸大手の「メディパルホールディングス」が8月、安定的で効率的なジェネリック医薬品の供給体制の構築を目的とし、資本業務提携を締結したと発表した。増資の結果、メディパルは持株比率9.90%の筆頭株主となる。小林化工、長生堂製薬でも品質不正が発覚し「ジェネリック医薬品製造の管理はメーカーだけで行うのは難しいかもしれない」という認識が広まる。その意味で両社の提携はモデルケースになるかもしれない。
