
トランプ政権は銀行への規制緩和を進める。ただ、その動きは米国だけではない。欧州でも規制は緩和の方向にあり、1988年のバーゼル規制以降の規制強化の流れは反転する。一方、資産運用会社などNBFI(いわゆるノンバンク)への規制は厳格化されそうだ。(ピクテ・ジャパン シニア・フェロー 大槻奈那)
1988年のバーゼル規制以降
銀行への規制は強化の一途だったが
今から37年前の1988年、主要国が統一的な銀行規制で初めて合意した。バーゼル規制のスタートである。以来、世界の金融機関は相次ぐ規制強化に対応を迫られてきた。
この流れは今でも続いている。リーマン・ショックの影響が落ち着いた2016年から23年までの8年間で、米国の銀行がコンプライアンス対応に費やす時間は62%増加し、取締役会がこれらの議論にかける時間も、27%から43%に増加している(Bank Policy Instituteによる調査)。
人的資源だけではない。財務面でもリスクへの備えは年々拡充されている。米銀のTier1資本比率は過去20年間で32%上昇した(図表1参照)。不良債権比率もこの20年間でほぼ最低水準にあり、2015年以降は米国の銀行破綻は年間1桁 に抑えられている。
こうした状況を受け、ほぼ40年ぶりの金融規制緩和の波が訪れている。次ページでは、その内容を検証するとともに、NBFI(ノンバンク金融仲介業者)への規制が強化されつつある現状に焦点を当てる。