
実物資産(RWA、リアルワールドアセット)のトークン化が米国を中心に急速に進展している。ブロックチェーン技術を活用し、不動産や債券、美術品などをデジタル資産として流通させる仕組みだ。NFTブーム後の冷却を経て、現在は金融実務に根ざした取り組みが加速している。その利点やリスクを検証しながら、トークン化がもたらす新たな金融の地平を展望する。(ピクテ・ジャパン シニア・フェロー 大槻奈那)
RWAトークンの市場が拡大
残高は250億ドルに急増
米国で実物資産のトークン化(RWA<リアルワールドアセット>トークン)が急速に活発化している。トークン化とは、実物資産や有価証券などをデジタル資産に転換しブロックチェーン上等で取引できるようにすることだ。
RWAトークンの例には、不動産や美術品、有価証券などがある。数年前に一世を風靡(ふうび)したNFT(非代替トークン)もこれに当たる。なおステーブルコインも通貨のトークン化といえるが、RWAトークンとは区別される。
現在、実物資産のトークン化商品の残高はRWA.xyzによると、7月8日時点で250億ドル(約3.6兆円)に達している。(図表1参照)。昨年の同時期から2倍以上になっている。
次ページでは、その歴史を振り返りながらその利点、今後の見通しを検証する。