日系競合他社に先駆けて中国に上陸し、ローカル企業との合弁を繰り返しながら、急成長中のセコム。これまで、官による規制が他産業よりも厳しかった警備・セキュリテイ市場で、頭一つ抜けたシェアを獲得するに至った背景には、どのような戦略があったのだろうか? それを学ぶことは、生き馬の目を抜く中国市場で一攫千金を夢見る日系企業にとって、大いに参考になるはずだ。上海セコム(上海西科姆電子安全有限公司)の山口忠弘・董事・総経理が、その経緯を語る。

山口忠弘/上海セコム(上海西科姆電子安全有限公司)董事・総経理。1976年、日本警備保障(現セコム)入社。名古屋支社、札幌駐在、東京本社勤務、台湾駐在、中部本部営業開発課長、福山支社長、九州事業部課長、セコム山陰統括部長、神奈川第二支社営業部長、ホームセキュリティ販売会社取締役、海外事業部中国グループ担当部長などを歴任。95年、総経理として上海セコムの立ち上げに携わる。98年に帰国後、武蔵野三鷹ケーブルテレビに代表取締役社長として出向。2006年から再度上海に赴任し、上海セコムの総経理を務める。

――中国における警備・セキュリティビジネスの状況はどうですか?

 現在、中国でセコムがサービスを提供している地域は15都市ありますが、私は浙江省と山東省を除く華東地域(広域上海圏)の事業運営を担当しています。

 日本を含め、どの国においても治安に関係する警備・セキュリティビジネスは、基本的にローカル企業、軍、警察などが独占しているケースが多いのが現状です。

 中国も、これまで公安局の関連組織である公営企業が警備サービスを独占してきました。「1つ1つの建物の治安が守られれば、町全体の治安も守ることができるので、これは政府が司る分野」という発想でしょう。

 たとえば上海の場合、区ごとに公営の警備会社があります。警備会社によっては、「治安維持は営利ビジネスではなく公営事業」という考えに基づき、ある意味利益度外視でサービスを提供しているところもあります。