すべて手作業で年間1万本製造
「傘の村」を作るのが夢

社員は20名ほど。縫製は主に女性の職人が行っている

 福井にある福井洋傘を訪ねた。案内してくれたのは、企画開発部の中路翔馬さん。京都府福知山市出身の26歳だが、橋本さんの「お客様の都合で良い傘を作る」という信念に惚れ込んで就職を決めた。

「実はここまで県外から傘をわざわざ買いにいらっしゃる方もいるんですよ。先日は、神戸からうちの傘を買うために福井に来てくださったお客様がいました」(中路さん)

 そう嬉しそうに話す中路さんの姿はとても印象的だ。今、同社は社員が20名ほどで、若い社員は中路さんだけでなく、何人もいるのが心強い。

 早速、年間約1万本を製造しているという製造現場にもお邪魔した。

傘の生地に「つゆ先」を手で1つ1つ縫い付けている

 すべて手作業で傘の生地を切りとり、縫製を行う。福井洋傘の傘は多くが12枚以上の生地を繋ぎ合わせてできており、その縫製もすべて人がミシンを使って行う。また、傘と骨やつゆ先などの部品の縫い付け、持ち手などのパーツの取り付けは、1つ1つ手縫い。いずれもとても繊細な作業だ。

 実は現在、傘の骨の製造も福井洋傘で行っている。傘を開け閉めするとき、指が金具に挟まらないか、毎回怖い思いをしていないだろうか。福井洋傘ではそんな恐怖心をなくすワンタッチの骨を作り、高齢者でも使用しやすい作りになっている。その企画・製造を中路さんは行っている。

企画開発部の中路翔馬さん。持っているのは中に絵付けが施された傘

「今、傘メーカーだけでなく、部品メーカーさんも次々に廃業しています。そうなれば、自分たちも傘を作れなくなってしまう。そうした社長の考えもあり、今はパーツもすべて自分たちで作れるようにしているんです」(中路さん)

 橋本さんは傘の部品などを作るメーカーや様々な技術を集結させて、「傘の村」を福井に作りたいと意気込む。

 今や日本のみならず、香港やマレーシア、シンガポール、ヨーロッパではパリ、ミラノ、ロンドンといった大きな都市でも販売されている福井洋傘の傘。

「僕は海外で販売するとき、”Made in Japan?”と聞かれたら、こう答えるんです。”Made in Fukui”って」(橋本さん)

 福井でもまだ知らない人が多い「福井洋傘」の傘は、都会や海外で福井の“新名産”になっていた。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 林恭子)