再びブームを迎えている落語。落語家の数も増え、高学歴がごく当たり前になっている。その中で気を吐く女性落語家たちにも、名門校出身者は多い。(「週刊ダイヤモンド」2016年11月19日号特集「最強の高校」より。ジャーナリスト・鈴木隆祐)
早大、出版社から落語家へ
柳亭こみちの国分寺高時代
落語は一人で筋を語りつつ、複数の人物を演じ分け、爽快なあるいは玄妙な落ちをつける、究極の話芸である。長い話となると、前ふりとなる枕を含めて1時間にも及ぶから、まず覚えるのさえ大変だ。
枕に時事ネタを持ち込み、融通無碍に膨らます技量で支持されるのが、今や人間国宝となった柳家小三治である。小三治が落語にハマったのは都立青山高校の生徒時分。早稲田大学志望だったが、「東大以外は大学ではない」と言い放つ厳格な父親に反発し、落語家を志した。
この小三治を大師匠と仰ぐのが、来年に真打ち昇進を控える二つ目の柳亭こみちだ。都立国分寺高校から早稲田大学第二文学部に進み、卒業後は出版社で働く一方で、演劇観賞に熱中。多いときは週10回も劇場通いを続け、たまたま見たい芝居が満席だった折、友人の勧めで寄席に行って、落語のとりこになった。そして、大師匠の芸に触れて心酔し、門弟の中でも論客の柳亭燕路に入門した。