たったひとりの犯罪者とは?
ところが、驚いたことに、たったひとりだけ、犯罪に手を染めた人物がいた。
武蔵野は「日本経営品質賞」(公益財団法人日本生産性本部が創設した企業表彰制度、武蔵野は日本で初めて2度受賞)へのチャレンジを機に(1997年)、社員教育にさらに力を入れ、大きく変わりました。
今では、卑怯な手を使うことも、腕力に頼ることもありません。
でも、その人物だけは、数年前まで、罪を犯し続けていました。
「その人物」とは、いったい誰だと思いますか?
何を隠そう、武蔵野の社長、小山昇です。
犯罪を犯していたのは、「私」でした。
犯罪と言っても、刑法や民法で裁かれるような犯罪を犯していたわけではありません。
私の罪状は、言うなれば、
「社員の残業を容認した罪」。
けれど、当時の私には、「犯罪を犯している」という意識はありませんでした。
なぜなら、
「残業は、減るはずがない」
「社員が遅くまで仕事をするのは当然だ」
「残業を減らせば、会社の利益も減ってしまう」
と思い込んでいたからです。
でも、私の考えは間違っていました。
残業が増えれば、人件費や固定費が増えて、会社の経営を揺るがします。
残業が増えれば、訴訟リスクが増えます(→本書に飲食店の実例あり)。
残業が増えれば、社員の健康を損ないます。
残業が増えれば、新卒社員がどんどん辞めていきます。
私は、会社にも社員にも、大きなリスクを負わせていたのに、残業を防ぐ努力をまったく怠っていた。
実際に、「社員の残業を容認した罪」という罪状はありませんが、これは、犯罪と同じです。
私は常々、経営サポート会員(武蔵野がコンサルティングをしている会社)を集めては、「社長の無知は犯罪である」と説いていたのに、そんな私が罪を犯していたのだからお恥ずかしい限りです。
次回からの連載では、「残業ゼロ」への取り組みを紹介していきましょう。