前回示したように、消費税率を5%引き上げる程度の増税では、すぐに歳出増に飲み込まれてしまう。だから、歳出構造の見直しがどうしても必要である。
「歳出の見直しなしに、財政再建はない」とは、きまり文句のように言われることだ。しかし、どこに問題があるかは、必ずしも正確に把握されていない。多くの議論は、多分に感覚的なものだ。そこで、まず、問題の根本がどこにあるかを把握しておこう。
歳出伸び率は、税収伸び率より高い
改めて言うまでもないことだが、増税というのは、歳入の「レベル」を引き上げることである。しかし、長期的に問題になるのは、歳出と歳入の「伸び率」の差だ。ところが、現在の日本の財政は、歳出の伸び率が税収の伸び率より高いという問題を抱えている。具体的には、つぎのとおりである。
2011年度一般会計歳出総額92兆4116億円のうち、国債費が21兆5491億円、社会保障関係費が28兆7079億円、地方交付税交付金等が16兆7845億円を占めている。これ以外の歳出は、防衛費4兆7752億円、公共事業費4兆9743億円、文教及び科学振興費5兆5100億円などを含めて25兆3701億円だ。
ところで、日本経済の状況を考慮すれば、年率1%を大きく超える税収の伸び率を期待することは難しい。
他方で、制度を大きく変えなければ、社会保障関係費は、これまで見てきたように高齢者の増加率にほぼ等しい率で増加する。それは、1%を超える。
また、地方交付税交付金は、税収の一定率とされているので、制度を変えなければ、税率とほぼ等しい率で伸びる。
国債費は、利子率が変わらなければ国債残高の増加率とほぼ等しい率で増加する(正確には、少し違う。これについては後述する)。ところが、ここ数年の国債残高の増加率は、税収伸び率を遥かに超えている(2008年度末の546兆円から、11年度末の668兆円に増加)。将来の利子率がどのようになるかを予測するのは難しいが、国債残高の増加が続いて国債消化に支障が生ずれば、上昇する可能性が高い。そうなれば、国債費の増加率もさらに高まる。
このような構造があるので、税率引き上げ幅をいくら増やしても、増税直後には歳出と歳入のギャップが縮まっても、いずれは増税分が飲み込まれてしまうのである。