今年の5月30日、「クラスター弾に関する外交会議」がダブリンで開催され、非人道的兵器と言われるクラスター爆弾を全面的に廃止することと、既存の貯蔵分については8年以内に廃棄することが、参加国約110ヵ国の全会一致で採択された。12月3日にオスロで同条約の署名会議が開かれて、30ヵ国の批准をもって条約は発効される。つまりクラスター爆弾の使用と製造は、条約を締結した国においては、条約発効と同時に禁止されることになる。

 しかしアメリカ、ロシア、中国などクラスター爆弾の主要な製造・保有国は、ダブリンの国際会議に参加していない。よってこれらの国が、条約案に署名する見通しもない。

 また今回の合意には、クラスター爆弾の廃止国が、同爆弾を使用し続ける国との共同軍事作戦を行うことを容認する条項が付加されている。この条項の策定を裏で強硬に推進したのはアメリカで、表舞台で動いたのは、アメリカと軍事同盟関係にあるイギリスだ。

 複数の小さな爆弾を入れた親爆弾を投下する。目標の上空で親爆弾は爆発し、無数の子爆弾が広範囲にばらまかれる。地表に到達すると同時に子爆弾は炸裂し、目標は広範囲に大きなダメージを受ける。

 これがクラスター爆弾だ。制圧地域が極めて広いため、本来の目標である軍事基地や拠点ばかりではなく、たまたま近くにいた一般市民が被害を受ける可能性がとても高い。また、目標に命中しなかった子爆弾の数十%は、不発のまま地上に転がったり、木の枝に引っかかって残るため、戦闘行為終了後にも一般市民を殺傷しつづけることになる。

 つまりクラスター爆弾の不発弾は、1999年にオタワ条約(対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止並びに廃棄に関する条約)が施行された対人地雷に、機能的にはほぼ等しい(この条約についても、アメリカ、ロシア、中国は今のところ批准を拒否している)。

世界中に
40億個が眠る子爆弾

 クラスター爆弾は決して新しい兵器ではない。投下された親爆弾から飛散した子爆弾が炸裂して敵に致命傷を与えるという発想は、第二次世界大戦時から実用化されていた。東京大空襲に使われた焼夷弾もクラスター爆弾だ。ベトナム戦争における北爆で、最も多く投下されたと言われている。

 現在は73ヵ国がクラスター爆弾を保有し、そのうち35ヵ国で210種類を製造している。ちなみに日本も、三菱重工業など国内の3社が生産を請け負うクラスター爆弾製造国であり、4種類のクラスター爆弾を貯蔵している保有国だ。アメリカ、ロシア、英国、ドイツ、イスラエルが「輸出大国」で、統計によると、今までに世界中で約3億6000万個の子爆弾が使用され、不発弾3000万個が23ヵ国に残っていると推測される。さらに世界中の武器庫に保管されているクラスター爆弾の子爆弾は、およそ40億個以上と試算される。

 ……とここまで原稿を書いたところで、今年12歳になる息子が、いきなりノックもせずに部屋に入ってきた。