東日本大震災直後から海外市場で円高の「思惑」が高まった。対外債権国の日本は経済的苦境になると、対外投資が鈍り、既存の海外資産を処分し国内へ資金を還流することで円高を招きやすいというものだ。今回は地震保険金支払いの資金還流が大規模に起こるとの思惑が高まり、1995年の阪神淡路大震災後の円急伸がその証拠とされた。
しかし、そこには「誤解」がある。地震大国ゆえに地震保険が巨額だろうと海外勢は考えるが、日本の家計向けの地震保険は金額を抑えつつ、民間損保と政府の再保険とのあいだで完結する仕組みだ。家計以外の保険を考慮しても、円高を招くほどの資金還流は想定されない。
また95年の阪神淡路大震災後の円高は地震に起因するものではなかった。日本では90年のバブル破裂から続く株安と円高、日米貿易交渉の最終局面が重なり、円高恐怖症が極まっていた。