「病院やクリニックには、アレルギー科を標榜しているところがありますが、実は日本には、アレルギー学について専門的な教育を受けたドクターはほとんどいません。呼吸器アレルギーや感染症膠原病アレルギーなどの講座(名)はありますが、そのほとんどはアレルギー学ではなく、呼吸器、膠原病などが専門の講座なのです。

 確かに、各大学の講座でアレルギー基礎理論の教育は行われているでしょう。しかし、アレルギー患者の診療に必須のアレルギーの原因を確かめるための、アレルゲン学の教育はほとんど行われていないのが現状です。

 アレルギー専門医にしても、原因からアプローチするアレルギー学、アレルゲン学の重要性を認識していない指導者が中心なので、専門医教育には当然反映されません。

 そのため、アレルギー疾患の原因を確かめることができず、アレルギー治療難民は増えています。治療困難な成人の食物アレルギー患者を、国内で有数な病院の高名な医師ですら、まったく診断できていません。

 私のところに送られてくる症例も、誤診例が非常に多いのですが、それも多くが有名施設からの紹介です」

 こうした現状を変えるには、国内の大学の医学部に、"本当の"アレルギー学講座を設け、医学部生の教育から入るしかないと谷口医師は主張している。

「アレルギーは死につながることはあまり多くありません※が、患者数の多さから考えても、純粋のアレルギー学がわかる教員がいて、若い医師や医学部生に教育を行うことが絶対に必要です。

 国立病院機構相模原病院・臨床研究センターでは、アレルゲンや原因物質の同定に力をいれ、それらを若手ドクターに教え習熟してもらっていますが、これで教育して巣立つのは年に数名で、日本全体で考えるとほんのわずかです」

※ 直接のぜんそく死は、20年前の年間6000人以上から現在では1500人まで減少している。しかし、間接ぜん息死、すなわちステロイドによる副作用(骨粗しょう症や感染症など)で亡くなる方は、今でも少なくない。ただしこれは医学統計や死亡診断書統計には表れないので、あまり知られていない。

 実は、筆者の長男は乳児の頃、長期間咳が治まらず、近所の小児科クリニックに通院していた。ある日、母乳を飲むことも、泣き声をあげることもできない様子に驚き、急いで受診させたところ、

「この子はぜんそくです。発作も起きていないようですから心配ありません」

 と医師は笑って、聴診器をあてることすらしなかった。

 だが、それから1時間後、長男は40度の高熱を出し、大きな病院へ救急搬送、「肺炎」を起こしていたことが分かった。

 入院が決まり、準備のために帰宅した私は、悔しくて号泣した経験がある。「ぜんそくに気をとられて、ほかの病気を見逃す」医師は、日本中にいるはずだ。

 主治医との信頼関係は大切だが、信じすぎてはいけない。