放射能は恐ろしい、と同時に、その恐怖によって引き起こされるパニックもまた怖い──ということを痛感させられた1ヵ月間でした。これを克服するには、まず正しい知識をもって冷静に行動することです。

 そこで今回の特集では、素朴な疑問から新たに発覚した疑念まで、一般人の私たちがわからない部分を、医師や研究者にしつこく質問し、図解を多用し、平易に解説しています。

 テレビに出てくる専門家は、「健康に対して、ただちには影響がない」と言うけど、「将来的には影響が出てくるのか?」、放射性ヨウ素や放射性セシウムに続いて、最近、新聞などで目にするようになった「ストロンチウムとは何か?」……。

 実際、「汚染された食品は、どれくらい食べても大丈夫なのか?」。これについては、自分で簡単に検討できる計算式を掲載しています。

 ところで、最も基本的なところで、「暫定規制値とは何か?」。暫定(とりあえず)なのは、これまでそうした規制値を用意していなかったから、とり急ぎ設定したということです。国として、いかに備えがなかったか。事態を端的に示す一例と言えるでしょう。

 特集の後半では、今回の震災で大ダメージを受けた食品メーカー、生産者、外食産業を取材して、レポートしています。

 ミネラルウォーター、ヨーグルト、納豆は、いつになったら品不足が解消されるのか。東北の太平洋沿岸部が一大産地のカキ、ワカメ、サンマ、サバは大丈夫なのか。メーカーや市場関係者にヒアリングして、予測しています。

 震災被害に遭った農業、酪農業、水産業の生産状況は相当に深刻です。現地でお話を聞いた生産者は一様に、「早く補償をしてくれないと廃業せざるをえない」と訴えていました。これは、原子力発電所事故に端を発する風評で被害を受けている北関東の生産者の声でもあります。

 風評問題の解消は、私たち消費者が、事態を正しく認識し、科学的に問題ない食品はこれまで通り飲食していくことから始まります。

 確かに、「正当にこわがることはなかなかむつかしい」(戦前に活躍した物理学者・随筆家、寺田寅彦)ものですが、冷静な行動を実践し、自分たちの「食」を守りたいものです。

 また、特集2「歴史から学ぶ復興」では、関東大震災や阪神・淡路大震災、中越震災などの事例から、今回の震災からの復興策を考えます。復興政策の第一人者や、実際の震災復興をリードしてきた政治家らが、地に足の着いた、現実的な提言を展開していきます。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 大坪 亮)