Photo:Lee Jae-Won/AFLO

財閥中心、輸出牽引型
成長の果てに

 2月17日、韓国最大の財閥サムスングループの事実上の経営トップ、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が逮捕された。容疑はグループ企業の合併に関する便宜を政府に求めたこと、朴槿恵(パク・クネ)大統領の知人である崔順実(チェ・スンシル)被告への贈賄などだ。

 これまで、韓国経済はサムスンを筆頭とする10の財閥グループに支配されてきた。背景には、パク大統領の父親、故・朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が、経済成長率を高めるために財閥企業を優遇したことがある。

 それ以降、政府は財閥企業に独占取引権を付与したり、優先的に事業の許認可を出したりして積極的に財閥の経営を支え、財閥企業を中心に輸出牽引型の経済体制を作り上げてきた。中でも、サムスンはGDPの約2割を占める大黒柱として、韓国の政治・経済に大きな存在感を示してきた。

 その結果、歴代の大統領や政府関係者が、大手の財閥企業と癒着することにもつながった。実際、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領以降、財閥企業から不正に資金を受け取るなどして摘発された大統領経験者は多い。韓国社会は一部の権力者と財閥が富み、その他の国民は経済成長の恩恵を享受し難い、不平等感の強い構造が出来上がったともいえる。

 そうした経緯を踏まえると、韓国は崔順実被告の国政介入の原因を究明し、大統領を中心とした政権中枢と民間企業の癒着を断つ取り組みを進めることが必要だ。癒着の解明を進めながら、韓国は、中長期的な視点で民主主義を基盤とした政治を確立し、公平に所得を再分配できる経済体制を再構築するべきだ。

 改革を進めることができないと、韓国の国力が低下し、朝鮮半島情勢を巡る緊張感が高まる恐れがある。韓国の政治と経済の動向は、国際社会にとっても無視できないリスク要因になりつつある。