がんの治療をしながら
「働く」という選択肢もある

 最近のがんは生存期間だけでなく治療そのものが長期間に及ぶこともあり、仕事を辞めてしまうと、医療費はかかるのに収入が減ってしまい、経済的に苦しくなります。傷病手当金や障害年金といった社会保障もありますが、それでも働いて得る収入に勝るものはありません。

「NPO法人がん患者団体支援機構・ニッセンライフ協同実施アンケート調査」によると、がんと診断されたときは約395万円だった平均年収が、仕事を辞めたことで約167万円に減ってしまっているのです。その結果、治療費の支払いに頭を悩ませる患者さんも少なくありません。

 今の社会の状況が、がんの患者さんにとってあまねく働きやすい環境かといえば、そうではないと思います。でもこれまでがんになった患者さんたちが、行政や企業に働きかけてきてくれたおかげで、企業ががんにかかった従業員を受け入れる体制も少しずつですが改善されてきています。
 そして、「働く」ということの大切な意味は、経済的な事情だけではなく、社会と関わることで自分の存在意義を確かめ生きていく力を得るという側面もあります。

 もちろん、体調が思わしくないのに、無理をして働くことはありませんし、治療に専念したいという人もいると思います。すべてのがん患者さんに仕事を無理強いするのは間違っていますが、がんだからと言って仕事をしてはいけない、ということはありません。とにかく、がんと診断されたことで、悲観的になってすぐに仕事を辞めることだけは絶対に避けてほしいと思います。

 辞めずに働いている人も多くいる。経済的にもできれば働き続けたい。