どこまでデータを“活用”しているのか

 配車サービスのウーバー(Uber)やリフト(Lyft)、自宅をホテルのように提供するエア・ビー・アンド・ビー(Airbnb)などの民泊サービス。これらを総称する「シェアリングエコノミー」は、ごく普通の人々をつなぎ、余剰の時間や所有物を利用して収入を得る手段を与えるインターネット時代の新しい経済体系だとされてきた。

 ところが、シェアリングエコノミーにはそうした利点がある一方で、両方の利用者を搾取する「テイキングエコノミー」にもなっているという論文が発表された。シェアリングエコノミーの負の実態がよくわかる内容だ。

 論文を書いたのは、ワシントン大学法大学院准教授のライアン・ケイロー氏と、データと社会研究所の研究者アレックス・ローゼンブラット氏だ。ケイロー氏はロボットの倫理など、テクノロジーにおける新たな法律に関する研究が多く、ローゼンブラット氏は、テクノロジー時代の人間性を研究してきた人物だ。

『The Taking Economy: Uber, Information, and Power(搾取経済:ウーバー、情報、そして権力)』と題されたこの論文は、搾取の背後にあるのは情報の非対称性だとしている。著者らの言い分はこうだ。

「シェアリングエコノミーは、情報と権力の非対称性の上に成り立っている。これまでもビジネスは、消費者の行動を自分たちの利に結びつくように仕向けてきたが、シェアリングエコノミー企業は消費者とサービス提供者の間に立って、すべての参加者をモニターし操作することが可能になっている」

 最近、アメリカではウーバーの行動に対して批判が高まっている。たとえば、「グレイボール」問題がある。これは、ウーバーが法的に禁止されている地域で取り締まり係員や役人を特定し、彼らが取り締まりの一環で配車アプリを利用しても付近に車がないように見せかけるという手だ。ニューヨークタイムズ紙が今年明らかにした。

 数年前にも同社に批判的な記事を書いたジャーナリストに対して、「どこへ出かけているとか、どこに住んでいるなどはすぐわかる」と同社重役が語り、個人利用者を特定してプライベート情報を明らかにできることを漏らしたことがあった。この場合は、それを脅しにも使えるという意味だが、グレイボール問題とも併せ、ウーバーがそれだけ詳細にわたるデータを取得しているのだとわかる。