入園者数が増えたUSJは「明」、減ったTDRは「暗」――。メディアには金太郎飴のようにソックリな記事が出ているが、単純にお客が増えれば「明」、減れば「暗」と決めつけられるほど、実態は簡単ではない。(ノンフィクションライター 窪田順生)

似たような記事ばかりがなぜ並ぶ?
マスコミ業界の裏事情

 ユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)の入園者数が3年連続で過去最高を更新し、東京ディズニーリゾート(以下、TDR)が2年連続で前年割れになったことを受けて、マスコミ各社の記事にはこんな見出しが躍っている。

USJとTDR 入園者数で明暗 (Yahoo!ニュース 朝日新聞デジタル配信 4月3日)
大型テーマパーク、西高東低=USJ最高、OLC減少-16年度入場者(時事通信 4月3日)
USJ入場者5.0%増、ディズニーは微減 二大パークが明暗(産経ニュース 4月3日)

慢性的な混雑や、スタッフの過重労働が問題となっている東京ディズニーリゾート(TDR)は、むしろ入園者数が大きく増えない時期がある方が、オペレーションを見直すためには好都合だ(写真はイメージです)

 なぜ揃いも揃って「明暗」など同じ表現が並ぶのかというと、別に談合やパクリをしているわけではなく、これが報道の作法というか、「フォーマット」ということが大きい。比較対照できるライバル同士で、かたや好調でかたや不調なら「明暗くっきり」。たとえば大阪が東京に勝っている場合などは、「西高東低」という言葉を使うのが“お約束”なのだ。

 毎日膨大な量の情報を扱う報道機関では、右からやってきた情報を機械的にフォーマットへ落とし込んで左へ流していく。実際、記者の中には自分のPCに、いくつか典型的な記事のフォーマットを用意しておいて、そこに数字や固有名詞を入れこんでいく、というスタイルで効率化をはかっている者もいるほどだ。

 だから、「どっかで見たな」という報道が繰り返し量産されていく。たとえば、14年ほど前のUSJが苦戦していた時代は、「TDLとUSJ、明暗分ける」(産経新聞 2002年10月2日)というような、今とは逆の報道が溢れかえっていた。当時の記事の日付と入場者数を今に直せば、そのまま先ほど紹介した記事になるのだ。

 記者たちは慢性的な長時間労働で、みな疲弊している。マスコミ業界のブラックぶりを考えると、このような方法で生産性を上げているのも致し方ないと思う一方で、あまりにも「フォーマット報道」が繰り返しされ続けることには、危惧を覚える。直近の数字だけにフォーカスをあてた「雑な比較」が当たり前になってしまうからだ。