インフラ投資や税制改革による経済成長を見越して、日本企業も今後相当アメリカに投資していくだろう。エネルギーコストは安いし、重化学工業系なども中国に向かっていた分がアメリカに行くようになるのではないか。アベノミクスにとっては追い風だ。だが、そこで喜んでいてはいけない。これは一種の「神風」と捉えなければ。

 日本はこの4年間、金融と財政だけでなんとか景気を上向かせようとやってきたが、実態はほとんど何も変わっていない。トランプ政権の経済政策によって、ここでまた「時間を稼げた」と思うべきだ。

 時間をもらったのだから、実態を伴う経済成長をしていくためにはどうしたらいいのか、日本は何が強くて、何で稼いで成長していくのか、構造改革、業務改革含めて、そこに本気で取り組まなければならない。そうした中で、アメリカに行ってやるべきものと、日本でやるべきものを峻別していけばいい。

日米政府間交渉では「データ」「ファクト」をベースに

――トランプ大統領就任直後、企業経営者たちがトランプ大統領への“お土産”に「アメリカにいくら投資する」「アメリカで何人雇用を創出する」と表明していることに対し「いくら大統領でも差別を公然と口にするような人物に対して、経営者というのはもっと毅然としていられないものなのか」という意見も聞かれました。日本の企業経営者は、トランプ大統領のアメリカにどう向き合うべきだと考えますか。

 私は常に政治と経済は基本的には独立していると思っている。政治は国家単位で考える、経済用語で言えば「単独決算」だ。

 だが、経済はグローバルで成り立っている「連結決算」だから、当然ビジネスの条件が良いところに向かう。株主に報いるために利益が得られそうな場所でビジネスをするのは、経済人としては当然の論理だ。

 ただ、私自身、経営には「資本の効率性の追求」「イノベーションの創出」「社会・地球の持続性の向上」の3つの軸が必要だと思っている。単に儲けることだけを考えるのではなく、企業の社会的使命などもバランスよく考えることが重要だ。環境・社会問題の解決、持続可能性を意識しつつ、利益が上げられると思うところに迷わず進出していく、といったことが重要なのではないか。

――今後、日米政府間の通商交渉において日本政府に期待することは。

 基本的に経済はグローバルな流れにあるので、自由主義、市場経済を基本とする理念をベースに議論していただきたい。

 例えば、対日貿易赤字の問題で「アメリカ製の車が日本で走っていない」と言われても「ドイツ製はこれだけ走っている。それは製品の魅力、消費者の選択の問題だ」としっかり返すくらいでいてほしい。

 要はデータ、ファクトをベースにしっかり議論して、合理的な結論に立ってもらえれば何も文句はない。

※編集部注:インタビューは2017年3月時点