ビットコインを用いれば、相手がビットコインを受け入れる限り、地球上のどこにでも瞬時に送金できる。しかも、これまでは想像もできなかったような方法で送金できる。例えば、ウェブにQRコード(二次元バーコード)を張り付けておき、そのページをインターネットに公開すれば、世界中の人からビットコインを受け入れることができる。このような送金手段は、これまでになかった。しかも、それが簡単にできるのだ。

ビットコインによる寄付が
世界からウクライナに集まった

 前回述べたように、ビックカメラの場合には、店頭にあるタブレット端末にQRコードを表示させ、購入者はこれをビットコインウォレットアプリで撮影して、ビットコインを送信する。

 これは、一見したところ、Suicaなどの非接触型の電子マネーの場合と似ている。しかし、QRコードさえ認識すれば送れるので、QRコードをコピーして、ウェブサイトに貼っておいても送金できる(ただし、この方法については、若干の注意が必要だ。これについては後で述べる)。

 2013年12月、アメリカの大学フットボール大会でのこと。「カレッジ・ゲイムデイ」(学生たちがプラカードを競う人気イベント)で、ある学生が、プラカードに「HI MOM SEND(お母ちゃん、送ってよ)」という文字と共に、ビットコインの図とQRコードを張り付けた。これがテレビで撮影され、全米に放映された。

 実況放送を見ていた人が、スマートフォンでテレビ画面のQRコードを読み取り、送金した。最初の24時間のうちに、なんと100件以上、2万2600ドル相当以上のコインが集まったそうだ(この資金は慈善団体に寄付された)。

 これを見て、ブラウザの発明者マーク・アンドリーセンは、「これからプロテスト運動をする人々は、プラカードを持ってテレビに映り、共感した人々から寄金を集められるようになるだろう」と言った。

 14年1月頃には、ウクライナとロシアの紛争が激化していた。

 数多くの写真が報道されたが、その中で、街路に築かれたバリケードの写真があった。「われわれは支援を必要とする」と英語で書かれた垂れ幕に、ビットコインのQRコードがある。バリケードには、犠牲者に捧げた花束が横たわっている。

 ロシアの大国主義に反対する人は、世界のどこからでも、この写真にあるビットコインのQRコードに寄付を送ることによって、戦っている人々を支援できる。

 アンドリーセンが「政治運動の形に影響を与えるだろう」と予想した直後に、それが現実のものになったのだ。