100年を超える歴史を持ち、日本法人が設立80周年を迎えた日本IBM。世界170ヵ国にまたがる名実ともにIT業界の巨人でありながら、次代を見据えて注力する事業形態を変え、進化している。現在の主軸であるサービスやクラウド事業のキーマンに話を聞いた。(聞き手/多田洋祐・ビズリーチ取締役・キャリアカンパニー長)

脈々と続く「野鴨精神」

多田 IBMの歴史は100年以上あり、日本IBMも80周年ということですが、「企業が長く続くための文化」や「大事にしている戦略」はどこにありますか?

キャメロン・アート 日本IBM取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長

キャメロン IBMには「お客様第一主義」、「変化する組織」、そして「多様性(ダイバーシティ)」の3つの要素があります。「お客様第一主義」という文化が根付いており、お客様の課題をどのように解決しご支援するかを念頭に置いています。また、「変化する組織」として、社員が常に革新的な考えを持つことを大切にしています。

 1959年、当時のIBM会長であったトーマス・ワトソン・Jrの言葉「ビジネスには野鴨が必要なのです。そしてIBMでは、その野鴨を飼いならそうとは決してしません」が脈々と受け継がれているのです。

 またIBMは「多様性(ダイバーシティ)を持った会社」でもあり、国籍、性別、嗜好性によらず、多様性を重んじ、多様性が多様な考え方を生み出し、また多様な考え方があるから安定した基礎を築けるのです。

多田 その文化を伝える仕組みとして専門部署があるのですか、あるいは経営者がリードしているのでしょうか。

キャメロン 文化的、組織的、全体的な3つの要素に加えて、経営層のリーダーシップが重要です。たとえば、IBMはインド、チューリッヒ、イスラエル、ニューヨーク、東京などに大きな研究機関を設け、毎年60億ドルにのぼる投資を積極的に行っていますが、社員が興味と好奇心を持って取り組むことが前提となっています。

多田 産業構造が変わる中で、時代の先を読み、スーパーコンピューター、PC、ソフトウェア、そして現在のクラウドのように世界の先端を走り、維持できているのは並大抵のことではないように思います。

キャメロン IBMは、テクノロジーがもたらす「ワクワク感」を常に考え大切にしています。多くの社員が、経済構造の変化などを見ながら、「コグニティブ&クラウド・プラットフォーム」や「API」をもとに、5年や10年先と現在をバランスしながら取り組んでいることも大きな要因でしょう。