アイデアを出しやすい「空気」のつくり方とは?
「何でもいいから、荒削りでツッコミどころが多いアイデアを出す」
孫社長は、新しい事業を始めるときはいつも、この方法でアイデアを募ります。
ソフトバンクの中で、最も荒削りで、最も無茶苦茶なことを言い出すのは、いつも組織のトップである孫社長です。
普通なら、「それをやったら絶対にクレームがくる」「コンプライアンスには通らないのではないか」と考えて口にしないことでもお構いなし。綿密に練られたきれいなビジネスプランではなく、ゴツゴツした石のようなアイデアがいきなり飛んできます。
「目が合ったら渡す」などというのは、まさに荒削りとしか言いようのない発想です。
もうお気づきと思いますが、組織のトップやリーダーが率先して粗のある発言をすると、いい効果があるのです。
それは、周囲の人たちがリスクを負わずに済むことです。
「アイデアはあるけど、成功の確率は低そうだし……」などと考えて発言をためらっているところに、リーダーが口火を切って「モデムをタダで配ったらどうだ? 街頭で目が合った人にどんどん渡すんだよ!」と言い出したらどうなるか。
他の人たちは「いやいや、『目が合ったら渡す』よりは、もっといい案があるだろう」と考えます。
そして、「だったら、プロの業者に委託して電話セールスをやりましょう」「家電量販店と組んでチャネルを拡大するといいのでは」といった意見を言いやすくなるのです。
リーダーがあえて粗のあるアイデアを出すことで、周囲の人が負うべきリスクを実質的にゼロにしているわけです。