
米政府や議会に働き掛けるロビー会社。トランプ政権の誕生で、ロビー会社の影響力も激変し、トランプ氏に近い5社の存在感も高まっている。有名なロビー会社と契約しても、民主党寄りでは意味がない。特集『トランプ人脈 全解剖』の#1では、最新のロビー会社の勢力図を徹底解剖する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
米国では一大産業のロビー活動
トランプ政権誕生で序列激変
ドナルド・トランプ米大統領の暴走を食い止めたい。新たなルールは自社に有利になるようにしてほしい。こんな思いを抱いた米国企業が真っ先に頼るのはロビー会社だ。
企業や組織が自らに有利になるよう、政府や議会に働き掛けるロビー活動。日本ではあまりなじみがないかもしれないが、米国では当たり前のように行われている光景だ。
報酬を受け取ってロビー活動を手掛けるロビイストは、米国では立派な職業として確立しており、ワシントンでは連日のようにロビー合戦が繰り広げられている。ロビー活動が一大産業として成立しているのだ。
産業があれば必然的に競争も起きる。ロビー活動を“飯の種”とするロビー会社は、政策や法律の専門知識や、有力議員とのコネクションなどを蓄え、影響力を競い合う。力のあるロビー会社は顧客を増やして収益力を高め、政府の元高官といった有力人材の獲得や献金などを通じて、さらに影響力を高めていく。そして、政権の要職にロビイストを送り込む。
そんなロビー会社の序列を激変させるのが、政権交代だ。二大政党制の米国では、共和党寄りや民主党寄りといった、“色”の付いたロビー会社もある。これを知らずにロビー会社と契約して報酬を支払っても、期待した効果は得られにくい。ロビー活動で出遅れているとされる日本企業でありがちな失敗だ。
米USスチールとの経営統合を巡る困難に直面している日本製鉄。統合を発表した2023年第4四半期から、ロビー会社の利用を始めた。23年のロビー費用額は3万ドルだが、24年は433万ドルと急増し、25年も第1四半期の時点で183万ドルを投じている。
そして、米国の公開資料からその支払い先を見ていくと、興味深いことが分かる。
実は日本製鉄が当初契約したのは、大手ロビー会社で民主党寄りだった。しかし、24年第2四半期になって新たに複数のロビー会社と契約。そのうちの1社は、トランプ氏に近いことで有名で、ここにきて急激に存在感を高めており、政権中枢に人材を送り込んだ企業である。
第2次トランプ政権の誕生で、ロビー会社の影響力も激変した。とりわけトランプ氏に近い5社に注目が集まっており、急速に顧客を集めている。そして5社の顧客には、日本製鉄の他にも、三菱商事やソフトバンクグループも名を連ねる。
今回、ダイヤモンド編集部は主要なロビー会社27社の勢力図をまとめた。トヨタ自動車や日産自動車、ソニーグループなど日本の大手企業が使っているロビー会社はどこか。トランプ政権入りしたロビイストを輩出したのはどのロビー会社なのか。次ページでは、最新のロビー会社の勢力図をお届けする。