ケネディ政権は超エリート揃いだったのに
なぜ最悪の意思決定をしてしまったのか

 当時、米国とソ連が対立する中、キューバはフェデル・カストロ、チェ・ゲバラらの活躍によって革命がなされ、社会主義国家へ転じようとしていた。

 米国から至近距離にあるキューバが親ソビエトになることにより、米国にとって軍事的脅威は飛躍的に高まる。さらに、これまでキューバに投資してきた米国の財がソビエト側のものになってしまう経済上のリスクもあった。

 このため、ケネディ率いる当時の米国政府は、総勢2000人の部隊を結成し、キューバのピッグズ湾から上陸後、カストロの革命政府を打倒するという作戦を決定した。

 しかし、その結果は惨憺たるものだった。侵攻1日目には、予備弾薬と兵糧を積んだ船4隻が現場に到着できなかった。待ち伏せしていたカストロ軍に、2隻が沈められ、残りの2隻は恐れをなして逃亡したのだ。これにより、先に上陸した侵攻部隊は後方からの援助を完全に断たれ、孤立することになった。

 侵攻2日目には、密林に待ち伏せしていた約2000人のカストロ部隊と米軍部隊が交戦、800人の死者を出した。3日目には残り1200人のほぼ全員が捕虜となって、強制収容所に入れられてしまった。

 ケネディ政権が肝煎りで行った軍事行動はわずか3日で水泡に帰し、ピッグズ湾侵攻は米国政策上、最悪の意思決定の1つと呼ばれた。

 当時の米国政府は、ケネディをはじめ、大統領府、顧問、委員会のメンバーは全て優秀なエリート揃い、人望も厚かった。これだけ有能な人材が集まっていたにもかかわらず、なぜこのような意思決定を行ってしまったのだろうか。ジャニスは、ケネディの側近であったシュレジンジャーの著作『一千日』を分析することで、その理由を探ろうとした。

 その結果、驚くべきことに、集団で決定したからこそ、個人で決定するよりも愚かな決定になることを発見した。ジャニスは、それを「集団思考」と名付けた。

 ジャニスによると、集団思考に陥った集団は、集団内に働く様々な力により、効率的な判断や道徳的判断が損なわれるという。彼は、トルーマン大統領の北朝鮮侵攻(朝鮮戦争)、ルーズベルト大統領の真珠湾攻撃への対処、ニクソン大統領のベトナム戦争拡大、ナチスドイツの意思決定なども分析し、重要な政策決定にも同じ現象が起こっていると結論づけている。