このような取り組みを実際に始めている企業もある。日立製作所は、社員の特性を集めたビッグデータを分析し、「積極性や活動性が高い傾向」の社員が不足していることを突き止めた。技術系の新卒採用ではこの不足する特性を備えた学生を積極的に採用し、“HRテクノロジー採用”の1年生として新卒採用全体の3分の2を占める約200名が入社した。

 また、インターネット広告大手のセプテーニHDも新卒採用にAI(機械学習)を活用している。選考で応募学生のパーソナリティを問うテストを実施すると共に、学生を良く知る周囲の人による評判情報を回収し、データをAI(機会学習)で分析する。すでに同社で活躍している社員のデータと照合し、どんな仕事でどんな上司と働くと成長するのかを予測して、合否の参考にしている。

 欧米では、こうしたAIを使った採用選考は日本よりも一般化している。中には面接の様子をビデオ撮影して、受験者の表情、言葉遣いから家庭環境や思考を分析することもある。受験者の観察ではなく面接官の質問の質や態度の向上にAIを活用することさえある。

 ただし、課題も出てきている。「テンプレートに合う人を採るということなので適切と言えば適切。しかし、結果的に差別につながるという問題もある」(KDDI総研リサーチフェロー・小林雅一氏)。米国ではアファーマティブアクションと呼ばれる差別撤退措置が厳格に働くが、AIは人種や年齢、性別などに意図的ではないにせよ偏りを出してしまうため、それを是正するための配慮も必要になるという。日本企業の人事も、AI活用を進めるにあたって、今から心得ておくべきことだろう。

人に関するデータを社内で連携できれば
採用以外でもAIは活用できる

 まだ研究段階の企業が多いが、採用以外の人事領域でもAI活用は動き出している。育成、配置転換、研修などがその対象だ。

 日本企業は企業内の組織連携が柔軟ではないところが多く、人に関するデータは人事、労務、事業部など各所に散らばっており、効率的に分析できていなかった。それらを繋ぎ合わせて社員全員のデータを揃えた(クレンジングした)うえでAIに読み込ませ、一元管理・分析すれば、人間には思いつかない関連性を見出すことができる。

 人に関するデータの分析は「ピープルアナリティクス」と呼ばれ、企業で働く個人の能力や経験にまつわるデータを収集し、人材開発や“適材適所”の配属を最適化するタレントマネジメントに役立つ。労務・総務に関わる給与や健康管理も、同一人物に関する人事データと突き合わせれば、機械の手を借りて適切に扱うことができるだろう。

 こうした仕事はデータサイエンティストが専門とするが、多数の従業員を抱え人に関するデータが豊富にある大企業だけでなく、中小企業もAIを活用することができる。