何よりまず、800ps/8500rpmと718Nm/7000rpmという超高回転型のV型12気筒6.5リッター・エンジンに注目すべきだろう。
今年、創立70周年を迎えるフェラーリが「812スーパーファスト」を日本でお披露目した。価格は3910万円、デリバリーは来年初頭だ。
超高級車メーカーも世界的にブームのSUVに手を染める昨今。だが極東と中東エリア統括CEOのディーター・クネヒテル氏は力強くいい切る。
「SUVの計画はありません。フェラーリの企業理念とモデルのエクスクルーシビティは不変で、そのアプローチは堅持しています」。
'60年代のラグジュアリーGTにちなむ「スーパーファスト」のネーミングを、今、史上最速のフラッグシップV12が受け継ぐことはロジックという。
「想定する顧客層はコアで純粋なフェラリスタ。日本にはロイヤリティの高い顧客が多く、812スーパーファストはその要求に応じて投入するものです」と、フェラーリ・ジャパン&コリア 代表取締役社長のリノ・デパオリ氏。
一方で、ツイッターやインスタグラムなどSNS発信を早くから日本語化した効果で、カリフォルニアTやGTC4ルッソで若い世代の顧客層をとり込めたと分析する。
実際、812スーパーファストは史上最強スペックだけが売りではない。電動パワーステアリング採用を機に、4輪操舵システムと前輪の操舵アシスタントをも統合した。
かくして攻撃的なパワースライドをも射程に入れた、高度なビークルダイナミクス制御を可能としている。ドライバーの支配下にないパワーやパフォーマンスに意味はない、そんな考え方だ。
70周年を迎えたブランド操縦術にも、同じ意志が垣間見える。伝統やブランドのメッセージが強力なだけでなく、それらをドライブする高度な最適化の手間を惜しんではならないのだ。