この数年、熾烈な開発競争が繰り広げられている抗体医薬。免疫反応を起こすタンパク質(抗体)を人為的に作製したもので、これを投与すると、病原体やがん細胞の表面にある標的(抗原)にくっつき“実弾”になる免疫細胞を呼び寄せて標的細胞を殺傷する仕組みだ。標的が絞られるので副作用が軽い一方、効果が十分とはいえず、有効性を高めるためにユニークな工夫が試みられてきた。
その一つが、協和発酵キリン独自の「ポテリジェント」技術だ。抗体を構成する「糖鎖」を1ヵ所減らすことで、免疫細胞との親和性(くっつきやすさ)を高め、細胞殺傷能力を従来の100倍以上に強化する。ストロー級の抗体医薬がヘビー級並みの破壊力に変身するわけ。副作用が軽い点はそのままに、ごく少ない投与量で大きな治療効果を上げたり、殺傷能力が低い抗体医薬では太刀打ちできなかった難治性の疾患も、もしかして「ポテリジェント抗体」なら、という可能性がわき上がる。