労働市場におけるロボカリプス(ロボットによる人類征服)はすでに始まっているのか。
6月27日、欧州中央銀行(ECB)が開催したカンファレンスの主要テーマがそれだった。マリオ・ドラギECB総裁をはじめ、他国の中央銀行幹部も多数参加。ブノワ・クーレECB専務理事は「こうしたカンファレンスを催したという事実が、われわれの関心を示している」と語った。中央銀行幹部にとって、人工知能(AI)等が雇用に打撃をもたらすロボカリプスは、金融政策に影響を及ぼし得るからだ。
国際決済銀行(BIS)は中央銀行家のサークルのような場だが、BISが6月25日に公表した年次報告書も、グローバリゼーションとテクノロジーの進展が賃金の上昇を世界的に抑制しており、それがインフレに下方圧力を加えているといった分析を掲載していた。
また、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のデイビッド・オートー教授は、「『ロボカリプスがわれわれに及んできたか』と人々が尋ねる時代になったことは、もはや疑いようがない」と、前出のECBのカンファレンスで語った(米紙「ニューヨーク・タイムズ」6月28日)。
ただし、オートー教授は以前から経済全体の仕事量に関しては悲観していない。機械が人の仕事を奪うという“脅威”は19世紀から何度も語られてきたが、世界は失業者であふれる事態になっていない。技術革新で消えた仕事は多いが、今のところは新しく生まれてきた仕事もたくさんあるからだ。ただ、今後もそうなのか、「今回は違う」のか、に関しては専門家の間でも見解が割れている。