エイベックスは外注していたライヴ事業を自前化し、レーベル、マネジメントとの三本柱を形成。ライヴのノウハウを積み重ねていく中で、一つの気づきを得ます。

 これって、うちのアーティストだけでなく、他社所属アーティストのライヴもできるよね、と。

 この時、ある種の「顧客ずらし」があったと言えるでしょう。ライヴを企画して、個人の顧客からチケット収益などを得ていたのが従前のビジネスモデル。数々のライヴ実績を重ねた後は、そのノウハウの蓄積が同社のアセットなのだと認識し、他社のレーベルやプロダクションをも顧客とする道に打って出たわけです。

「エイベックスという会社がマネジメントから始まっていたら、こういう考え方にはならなかった」と黒岩氏は言います。

「レーベルというのはプラットフォームを提供する“機能軸”。ライヴも同じで、外に提供しても生かされていくノウハウです。概念としてはレーベルに合わせていったということ。当社の歩みを考えると、必然だったように思います」

音楽とは関わりのない
新たな市場を開拓

 機能軸(レーベル)でスタートし、マネジメントに領域を広げ、再び機能軸(ライヴ)を追加したエイベックス。実は同社が見据える今後のビジネスにおいてこそ、まさに「顧客ずらし」が行われようとしています。

「第4の柱を音楽事業の中につくらなくちゃいけない。それは何なのかというと、大きいくくりでいくとやっぱり“ライフスタイル”というところに入ってくるのかなと思っています」(黒岩氏)

 音楽そのものを売り物にするのではなく、同社が有するアセットを活用して、人々の生活により密着した事業を展開できないか――。

 今年5月に東京・お台場で開催された未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」は、その一例と言えるものでしょう。世界初の3Dサウンドシステムやライティングなどの演出を駆使した“花火大会”の特筆すべき点は、エイベックスが仕掛けたイベントでありながら、歌手やバンドなどのアーティストがまったく出演しないことです。