気合いを入れて作った
オリジナル音楽テープ

 テレビの歌番組を、お茶の間で家族揃って見るのが日課だった中学生の頃、翌日学校へ行くと、クラスの女の子たちが休み時間にピンクレディーの振り付けを一生懸命練習していた光景を、今でも鮮明に覚えています。

 高校生だった1980年代は、アメリカで人気のポップスやロックを紹介するテレビ番組が大人気でした。ここで衝撃だったのは、何といっても最新ヒットチャートのプロモーションビデオの登場です。マイケル・ジャクソンのムーンウォークやダイアナ・ロスの歌う姿を映したビデオが、私たちの世代の心を一気にアメリカまで連れて行ってくれました。

 とはいえ、この頃は自由に使えるお金もあまりなく、欲しい曲のシングルレコードを全て揃えることなど夢のまた夢。FMラジオのガイド誌を買って来ては、ひたすら好きな曲が流れる時間を調べ、ラジカセで聴きながらテープに録音していました。いわゆる「エアチェック」です。

 そんな折、近所にレンタルレコード店ができたことは、私の音楽ライフを大きく変えてくれました。

 これで、エアチェックのように曲のお尻がフェードアウトして切れてしまったりしません。音質も全く違いますし、第一、何回でも録音し放題ですから、自分が好きな曲だけを集めたオリジナルテープを作ることができます。

 人気の曲のシングルレコードは発売直後、レンタルレコード店にいつ行っても貸出中でしたが、粘り強く通って最後の一曲を録音し終わり、完成したテープにタイトルを付けてコレクションするのが、とても楽しかったのです。

 大学入学後に車を手に入れると、これらオリジナルテープが大活躍。特に、気合いを入れて編集したラブソングバージョンは、ドライブ用のBGM用サウンドライブラリーとして、お目当ての女性を口説くためのドライブデートには欠かせないツールとなりました。

 ところが今や、音楽は「配信サービス」で買う時代。近ごろでは、定額制音楽配信サービスが登場し、ストリーミングで好きな曲が聴けるため、1曲ずつ購入してダウンロードすることすら不要。つまり、CDなどを所有することに対してでなく、クラウド上の楽曲データに接続するための「アクセス権」に対価を支払うというビジネスモデルです。

 気合いを入れてオリジナルテープを作っていた時代とは、隔世の感があります。