なぜかアジアの夜店に付きものの
ぼったくりが見られない

 現在では、交易都市としての面影はほとんどなく、観光都市として栄えている。だが近年になって、中国の一帯一路構想に基づいた開発が行われ、主要港湾として再び地位を取り戻そうとしているという。

 そのマラッカの名物の1つが、「ジョンカーストリートの夜市」だ。マラッカ中心部のジョンカー通りと呼ばれる観光街で、週末の夜に屋台が並び、多くの人で賑わう。売られているものは、ジュース、食べ物、お菓子、工芸品、土産物、薬など多岐に渡る。

 03年頃にSARSが流行した時は閑散としていたそうだが、ここ数年の週末はいつも人でごった返している。観光客が大半だが、地元民も多いそうだ。

 面白いのは、大抵、こういった夜店の屋台では、ぼったくりがつきものだが、ここジョンカーではほとんどそういうことがない点だ。スリやひったくりはたまにいるし、明らかに粗悪品や模造品と呼ばれるものも売っている。だが、ボッタクリはしない。

 先日筆者が歩いたときも、今流行っているハンドスピナーが山のように売られていた。値段を見ると、1個5リンギット、日本円で130円くらいだ。

「ほら、これはきれいに光るからいいよー」と店のおばちゃんが、見た目がきれいな光るハンドスピナーを実際に回し始めた途端、パキッと割れてしまい。思わず笑ってしまった。130円。安かろう悪かろうの見本みたいだった。その一方で日本で評価の高い、通称「民族」と呼ばれる種類は、900円程度で売っており、それは本当に質の良いものだった。

 つまり、ジョンカーでは観光客相手だからといって嘘をつくことなく「正直な商売」をしているのだ。そしてこれが、ジョンカーの夜市を賑わわせている原因なのである。観光客が安心していけるため、人が増え、店も儲かる。それでますます夜店が活気づくという好循環だ。

 ジョンカーストリートは観光客が必ずといっていいほど訪れる人気の通りだが、実はそのジョンカーから道を2本ほどずれた、クリ通りという道沿いに、小さな銀細工の店がある。Kua Teck Hong Silverという店だ。マラッカ王朝の頃、無実の罪をきせられた親友を助けるために、王家に戦いを挑んだ伝説の剣豪、ハン=ジェバット氏の墓地の向かいにある。