2年間で「森イズム」は
地域金融機関に浸透

 そうした環境の中で、森氏が2015年に金融庁長官に就任し、様々な改革を打ち出してきた。その根底にあるのは「平時の金融行政はいかにあるべきか」という強い問題意識であり、柱の一つが地域金融機関の「稼ぐ力」の強化である。

『ドキュメント 金融庁vs.地銀 生き残る銀行はどこか』
光文社新書
読売新聞東京本社経済部
821円(税込み)

 現在の安倍内閣の下では、「地方創生」という重要な課題もあり、地方経済の活性化のために地域金融の強化を図る方向性は的確といえ、目に見える形で目標を掲げて経営力強化を促してきた2年間だった。読売新聞東京本社経済部では、若手記者が中心となって森長官の改革の経緯や地域金融の現状を『ドキュメント 金融庁vs. 地銀 生き残る銀行はどこか』にまとめた。

 本書は、近年の金融行政と地域金融機関の変化に取材記者たちが敏感に反応し、新聞連載として結実していたことが土台にある。さらに、森長官の考え方や行政手法について、金融関係者が詳しく知りたいと思っているにもかかわらず、十分に情報が伝わっていないのではないか、という問題意識にも立脚している。「週刊ダイヤモンド」をはじめとする経済誌で金融庁の特集を組むと売れ行きが良く、関連する書籍が高い関心を呼んでいることもそうしたことを象徴している。

 かつて金融行政が「危機モード」にあった時には、金融庁の関心は大手行に向けられており、地域金融機関はむしろ大目に見られていた。このためこれまでの金融庁の地域金融機関に対するアプローチも、アグレッシブな改革というよりは、むしろ緩慢な形で行われてきた。

 森長官の目指す改革の基本的な方向性は、経営体力に余裕があるうちに「稼ぐ力」を身につけ、顧客本位の観点で金融サービスを提供し地域経済に貢献してほしい、という点である。この2年間で「森イズム」は地域金融機関に徐々に浸透し、一定の成果を上げてきた。しかし、何をすればよいのか自ら判断・実行できない地銀や第二地銀もいまだに多い。