話題の「ビットコイン建て社債」で安全な資金調達はできるか?金融情報サービス企業のフィスコが、ビットコイン建て社債を発行した。面白い試みではあるが、実際のところ、ビットコイン建ての債券で安全な資金調達はできるのだろうか

面白い試みだけど大丈夫?
フィスコがビットコイン建て社債発行

 8月15日の朝刊に興味深いニュースが掲載された。グループ会社で仮想通貨取引所も運営している金融情報サービス企業のフィスコが、ビットコイン建て社債を発行したというニュースだ。発行の目的は、内外に仮想通貨による資金調達の道を示すためだという。

 ビットコインなどの仮想通貨は一部の投資家には人気だが、過去に取引所からビットコインが勝手に引き出された事件のイメージもあり、敬遠する投資家も少なくない。業界イメージを変えるためのアドバルーンとしては、面白い試みだと思う。

 さて、予め断っておくが、ここから先はフィスコの社債の話ではない。それはそれ、全く別の話として、今回は一般論としてビットコイン建ての債券というものが成立するのかどうかを、ファイナンス論的に論じてみたい。

 仮にある企業が、ビットコインで資金調達をやってみようと思ったとする。資金調達額は日本円で1億円相当で、利率は単利の年利3%、3年後にビットコインで償還する割引債だと仮定する。流行の「仕組み債」的な仕掛けを全くなしにこのような社債を発行するとしたら、どのようなことが起きるだろうか。

 それを実感するよい方法がある。3年前にやっていたとしたら、どうなったかを計算してみよう。2014年9月に前述の条件でビットコイン建て社債を発行した企業があったとする。当時のレートは1ビットコインが4万2000円程度。1億円の社債は2380BTC(ビットコインの単位である)に相当する。

 発行条件では単利で毎年3%の金利がかかる。利息は毎年71BTCで、これが3年分だから利息は213BTC。つまりビットコイン建て割引債で1億円を調達した企業は、3年後に元利合計で2593BTCを償還することになる。

 さて、あなたはこの会社の財務部長である。3年前に調達した1億円で始めたビジネスが順調で、同業から羨まれるくらい景気のいい状況だったとしよう。そこに社債の償還期限が近づいてくる。