人は「目新しいもの」に注意を向けてしまう
マルチタスクをこなそうとすると、瞬時に集中する対象を切り替えるよう脳が強要される。すると遅れが生じ、切り替えのたびに集中力が落ちる。
こうしたことが積もり積もると、貴重な時間が無駄になるうえ、知力が衰える。マルチタスクをしようとすると、かならず落とし穴にはまるのだ。
それがわかっていながら、なぜ私たちは、またぞろマルチタスクをしようと無為な努力をしてしまうのだろう?
第1の理由は、なんといっても、私たちが四六時中、おびただしい量の「邪魔物」に取り囲まれているということだ。テレビを観ているときでさえ、画面の下方には、ほかの番組を宣伝する文字が躍っているのだから。
マルチタスクの誘惑に負ける理由はほかにもある。「目新しさ」への渇望だ。
マルチタスクが間違っていることは承知のうえで誘惑に屈服するのは、私たちが目新しさを求めるからだ。外部からの刺激が現状に変化を起こすと、そうした変化がよいものと認識されようが悪いものと認識されようが関係なく、アドレナリンが血流を駆けめぐる。
すると、人は目の前にあるタスクより、新たなタスクのほうに注意を向けたくなってしまうのだ。
だが、防御策はある。脳の前頭前野の監視システムは、無関係な情報が流れ込んでくるのを制御する機能をそなえている。この監視システムが、どの情報が無関係で、どの情報に注意を向ければいいかを判断してくれる。
だから、注意散漫の原因となるものを減らそう。この習慣を身につければ、私たちは本来の目標を達成することができる。
そのうえありがたいことに、これは習得可能な技術である。あなた――そう、これを読んでいる、まさにあなた――にも習得可能なのだ。
(本原稿はデボラ・ザック著『SINGLE TASK 一点集中術』から抜粋して掲載しています)