「スキル等を含めた自社の本質的なアセット(資産)」を点検し、それを基点にして、振り向ける先をちょっと「ずらす」だけで、「新たな何かを(無理に)得る」必要はなく、新しい顧客を獲得できる。それが「顧客ずらし戦略」の基本概念だ。ミクシィのスマホアプリ『モンスターストライク』にも、巧みな顧客ずらし戦略があった。(フィールドマネージメント代表 並木裕太)

「モンスト」のヒットがSNSのmixiから生まれた必然的な理由モンストを大ヒットに導いた“生みの親”木村こうき・ミクシィ取締役

 自社の本質的なアセット(資産)を見つめ直し、そこから軸足を動かすことなく新たなビジネスを展開し、これまでとは異なる顧客を獲得する「顧客ずらし戦略」。その実践例を紹介する本連載の第3回では、株式会社ミクシィを取り上げたいと思います。

 説明するまでもなく、ミクシィは2004年にソーシャル・ネットワーキング サービス「mixi」を世に送り出し、日本におけるSNSの先駆け的存在となりました。当初、利用者数は順調に増えていきましたが、2008年に日本語版を開設したFacebookをはじめとする多様なSNSの普及、またスマホ対応への遅れなどが要因となり、勢いが衰えてきた面は否めません。

 そうした中、2013年10月に発表されたのがスマホアプリ『モンスターストライク』(以下モンスト)でした。ここにこそ、ミクシィの顧客ずらし戦略があったのです。

 今回、取材にご協力いただいたのは同社取締役の木村こうき氏。同社が設立した、バトルエンターテインメントの企画制作を担うXFLAG スタジオの総監督を務めており、モンストを大ヒットに導いた“生みの親”とも言える人物です。