>>(上)より続く

 もちろん、克也さんが売却損を現金もしくは借入で穴埋めすることができれば話は別ですが5年の結婚生活で貯めることができたのは、わずかに200万円でした。結婚から離婚まで築いた財産は法律上「夫婦共有」で離婚時に夫婦で折半しなければなりません(夫100万円、妻100万円)。さらに妻は手切れ金として「300万円払え!」と言っているのだから、克也さんの手持ちはマイナス200万円です。

「200万円も用意するなんて絶対無理ですよ!」

 克也さんは頭を抱えますが、ただでさえ夫婦が離婚するのはお金がかかるのに、自宅の売却損を現金で工面するのは現実的ではありません。

「あいつらには出てってもらって、代わりに僕が住めばいいじゃないですか?」

妻子、義母を追い出し、
自宅に自分が住み続けた場合は?

 克也さんは第二の案として「自分が住むこと」を思いつきました。妻と子と離れて暮らす以上、克也さんは子どもに対して養育費を現金で支払うことになります。

 克也さんの年収は650万円、妻は年収300万円なので、家庭裁判所が公表している養育費算定表によると毎月8万円が妥当な金額です。そして克也さんは離婚しても引き続き、住宅ローンの債務者なので毎月12万円を返済し続けなければなりませんが、克也さんの手取りは毎月35万円。住宅ローンと養育費を差し引くと手元に残るのは15万円です。

 ここから自分の生活費だけでなく固定資産税や修繕費をまかなわなければなりません。克也さんの場合、水道光熱費 3万円、生命保険1万4000円、医療費(持病の喘息のため、月1回の通院)5000円、携帯代1万5000円、互助会費、区費4000円、ガソリン代7000円、自動車保険 6000円、固定資産税1万円(1ヵ月あたり)、食費や雑費等の現金出費4万円と毎月約13万円かかるので、ほとんど余裕はありません。子どもの教育費、自動車の車検、家の修繕(外壁の塗り替え、水回りの補修など)といった数年後の支出に備えて毎月、貯金することは難しいですし、冠婚葬祭などの急な出費が発生したら赤字に陥ります。克也さんが自宅を購入したときに遡って考えてみましょう。